138: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/02/20(火) 00:16:57.22 ID:1IV/NG8u0
砂利だらけの道を、一台の荷車が音を立てながら進んでゆく。
雨上がりの原野。夏草の熱気と、露に濡れた土の匂いが混ざり合う。
青と緑で統一された、牧歌的な田舎道。
その中で、場違いなほど真っ白い輝きを放つ妙齢の女性がいた。
胸元の開いたドレスやレースのついたスカート、顔に乗せたつばの広い魔女帽も、何もかもが白い。
身体中のあらゆる色が抜け落ちてしまったかのようだ。
荷台に寝そべっていた彼女は身を起こすと、寝ぼけ眼でゆっくり辺りを見渡した。
ふわあ、と口に手を当てあくびする。
魔女「よく寝たぁ……。どう? もう着いたかな?」
荷車を引く長机に声をかけた。
元は、どこにでもあるような古びた長机だった。
それが魔女の魔法によって自我と手足を与えられたのだ。
物言わず、飯も食わないが、人間の言葉は理解できる。
召使としては、ぎりぎり及第点といったところか。
長机は緩慢な動きで身体を横に振った。
魔女「……まだ? まぁ、そうだね。景色が全然変わってないもんね」
魔女「意外と遠いんだよな〜、大富豪の屋敷。どれ、もうひと眠りいこうかな」
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