三船美優「写真の向こうの想い」
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7: ◆TZ9gOMQ.mU[saga]
2017/11/29(水) 04:04:46.90 ID:crkVqtSl0


 親の都合で引っ越しの多かった私は、内向的な性格も相まって友達と呼べる人が多くありませんでした。

 それが異性になると殊更で、クラスメイトの中でさえ、言葉を交わしたことのある男の子はほとんどいませんでした。

 ところがある日、私が犬を飼っていることを何処からか知った男の子が私に声を掛けてくれたんです。

「犬飼ってるんだって? 俺も犬を飼ってるんだ、今度見せてよ」と。

 あまりに突然だったので、とても驚いたのを今でも覚えています。

 声を掛けてくれたその子はクラスの中でも一際活発で、いつも輪の中心にいるような、そんな子でした。

 それからも度々あちらから話しかけてきてくれて、それがきっかけで他のクラスメイトと言葉を交わすことも少し増えていきました。

 最初に話した、犬を見せるという約束を果たせないまましばらく経ったある日、飼い犬――あの子と散歩をしていたら偶然にも彼と出会ったんです。

 書店に行く。と言った彼に、私は散歩のルートが同じだからと嘘を言い、着いていく事にしました。

 書店に着いた後も、あの子を軒先に繋げてそのままお店の中へ入りました。……そこで何を話したりしたのかは今はもう朧げです。

 お店を出ると、あの子が軒先から姿を消していて、暗くなるまで町中探し回りましたが見つからず、沈んだ気持ちで家に帰るとあの子はとっくに家に帰っていたんです。

 安心すると同時に、一緒になって探してくれた彼にとても申し訳なくなりました。彼は笑って許してくれましたが、当時の私はただただ謝る事しか出来ませんでした。

 それが私の初恋に当たる記憶です。




瞳子「初デートは書店ね」

留美「その後はどうなったの?」

美優「引っ越しすることになって、それ以来連絡も取っていません」

瞳子「……初恋は淡くはかない。そういうものよね」

留美「…………。その子の写真はないの? 美優さんの事だから卒業アルバムとか手元に有るんでしょ?」

美優「三年生の頃は別の学校に居たので、その学校の卒業アルバムは持ってないんです……すみません」

留美「いいのよ。ただちょっと残念ね、美優さんの初恋の相手がどんな人か見たかったわ」

美優「あ、そうだ…………代わりになるかは分かりませんが、これが有りました」ゴソゴソ

瞳子「これは、寄せ書き?」

美優「はい。私が転校する時にお別れ会を開いてくれて、その時に頂いた物です」


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