13:名無しNIPPER[sage]
2017/11/26(日) 11:18:53.87 ID:S9MN0QEK0
俺「もうすぐだ.もうすぐで,45cmへいける」
俺は傍らに置いたメジャーを確認して言った.
フェアリープリンセス「ぁあああっ!本当に,本当に離してくださいっ!」
彼女は悲鳴をあげるが,そんなことを気にしてられない.
俺「ほらっ,周りのフェアリー達も女王様を応援してくれっ.ほんとにあとちょっとなんだ!」
フェアリー達は互いに顔を見合わせていたが,俺はそんなに悪いことをしているわけでもなく,むしろ彼女を気遣っての行動だという結論に至ったらしい.
フェアリー「「「ゴールまであと少しですよー.頑張ってください,プリンセスっ」」」
ことによると,彼女が奮闘する姿が面白いらしく
フェアリー「殿方との初めての共同作業ですね!」
などとヤジを飛ばすのもいた.だが
妖精の使役者「なぜ笑うんだい?」
という男のドスの効いた問いを投げかけられ,沈黙した.
哀れなるかな.けっきょく女王は孤立してしまった.
フェアリープリンセス「そんな…守ろうとした妖精たちまで.私を見捨てるのですね」
彼女は悲しそうに目を伏せた.大粒の涙が一筋,頬をつたった.
俺はそんな彼女を精いっぱい励まそうとする.
男「大丈夫.皆仲間なんだ.みんな心の底から,アンタの健康を願って,いるんだ」
32cmを超えてからというもの彼女の抵抗は強まるばかりで,俺の限界も近づいていた.
男「かくいう俺もな」嘘である.
フェアリープリンセス「えっ,貴方が…?」
男「いいから行けよ,45.45cmの世界へ.あんたまだ年は20代だろ.なんで勝手に諦めてんだ」
フェアリープリンセス「…私,数百年は生きているのですが」ボソッ
男「ああんっ?なんだって!」
フェアリープリンセス「いいえ,貴方たちの気持ちは分かりました」
フェアリープリンセス「女王たるものとして,民草の願いを叶えましょう」
彼女の身体が目も眩むばかりに光輝く.そして気づけば,無数のフェアリー達が俺の背中を押していた.
フェアリープリンセス「勝手に,脱落しないでくださいね」
背中は圧す力はブルドーザーよりも力強い,質量の塊だ.
俺「へへっ,これが女王様の力ってことか.悪くない」
最初から,俺たちのことなんてどうにだってできたんだ.
ただ,民を守るためにその力を使わなかっただけで.
それがエルフの,女王だった.
フェアリープリンセス,フェアリー,俺,妖精の使役者「「うおおおおおおおおおおおっ!」」
目の前が白くなり,意識が薄くなっていくのを感じる.
俺は確かに,彼女の指先が45cmに達したことを見ることはできなかった.
でも,最期の瞬間,俺はきっと彼女たちと繫がることができたんだ.
開発部「フェアリーに押しつぶされて,GAMEOVERは草が生えますね」
俺「うるせー,次行くぞ,次」
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