かたほうのてぶくろ【片方の手袋】〈モバマスSS〉
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19: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 01:59:34.84 ID:Cjza4N/Vo

確か、木曜日だったはず。給食の時間に放送委員会からのお知らせがあったから、多分。
朝からちょっと体調が悪くて、保健室に行こうか何度か悩んで、授業にあんまり集中できなかった日だった。


以下略 AAS



20: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:00:27.55 ID:Cjza4N/Vo

掃除場所には私ともう一人の女の子しかいなくて、
男子がサボるのはしょっちゅうだったし後で先生に言うことにして二人で時間ギリギリまで掃除を続けた。

それが決行の機会になったみたい。
以下略 AAS



21: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:00:51.96 ID:Cjza4N/Vo

それだけの事が、私には大きな打撃だった。
ランドセルをひっくり返して、引き出しを何度も覗いて、ロッカーをバタバタと鳴らして。

 手袋がどこかいっちゃった。
以下略 AAS



22: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:02:44.10 ID:Cjza4N/Vo

冷静さを欠いてただ座り込んでしまった私に大丈夫、と声をかけてくれた友達にお願いをして、教室中を探してもらう。

右手の側はすぐに見つかった。チョーク入れの中で、粉まみれで。

以下略 AAS



23: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:03:15.45 ID:Cjza4N/Vo

女子たちが騒いでいるのを見かねたのか、大人しい方のグループの男の子が近づいて来て申し訳無さそうに教えてくれた。


いつもの男子たちが引き出しから手袋を盗んで、片方を何処かに隠してもう片方は新聞紙で包んで丸めて箒野球のボール代わりにしていた、と。
以下略 AAS



24: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:03:44.39 ID:Cjza4N/Vo

そのゴミ箱には、もう新しい袋がかかっていた。


集積所は体育館の裏手。
以下略 AAS



25: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:04:17.57 ID:Cjza4N/Vo

呆然としてクラスに戻ると、男子グループのリーダー格の子が「やりすぎだった」とかなんとか、へらへらしながら謝ってきた。

友達が先生に言いつけてくれていたみたいだったけど、先生は状況をよくわかっていないのかいつもと同じような対応しかしてくれていなくて。

以下略 AAS



26: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:04:51.70 ID:Cjza4N/Vo

……わからない。ただ、私にはそう見えたってだけかもしれない、けど。


それが、どうしようもなく悔しかった。
以下略 AAS



27: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:05:20.65 ID:Cjza4N/Vo

形だけの仲直りの印のつもりにか差し出された手を握りかえすことなく、
その男の子の頬を、力いっぱいはたいた。

手のひらは赤くじんじんと痛んで、それでも感情はおさまりきらなくて、
以下略 AAS



28: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:05:54.05 ID:Cjza4N/Vo

そう言った所まではちゃんと覚えてるんだ。


……良くも悪くも、強い感情を込めた言葉は、ずっと心に残るものだよね。
以下略 AAS



29: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:06:22.31 ID:Cjza4N/Vo

ショックで思い出したくないだけなのかもしれないけど、あの日どうやって家についたのかさえよくわからない。

その夜はただただ熱がでて苦しんで、明けた朝も学校へ行けなかった。

以下略 AAS



30: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:06:52.73 ID:Cjza4N/Vo

熱がひくまで長いこと寝たり起きたりを繰り返して、途切れ途切れの意識の中で、
お母さんが電話ごしに、よそ行きの声……いつもより、ずっとずっと冷たい声で、静かに誰かと話しているのを確かに聞いた。

ちょっとぞわっとしたけど、多分私を守ってくれているんだろうと思うと少しだけ安心して、深く眠りにつくことが出来たんだ。
以下略 AAS



31: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:08:01.73 ID:Cjza4N/Vo

休日を挟んで翌週、少し早い時間に登校して先生にあの日勝手に帰ったことを謝りに行った。
クラスの女の子たちはすぐに駆け寄って来て心配をしてくれた。

大騒ぎをしてしまってごめんね、と謝ったけれど、
以下略 AAS



32: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:08:31.54 ID:Cjza4N/Vo

あの手袋の代わりにとお父さんがシンプルな紺の手袋を用意してくれていたんだけど、学校に着用して来る気にはどうしてもなれなかった。
その代わりに、上着のポケットに手を突っ込んで過ごすようになった。

多分、当時の私の精一杯の強がりだったんだろうね。
以下略 AAS



33: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:09:16.70 ID:Cjza4N/Vo

件の男子たちとは目も合わせないくらい険悪なまま、クラスが変わるまで口もきかなくて。
関わってなかっただろう男子の事も少し避けてしまうようになって、そのまま女の子とだけ仲良くするようになってしまった。

どうしても、あの時のことを思い出してしまって、不信感を拭えなくて、少し冷たく当たってしまう。
以下略 AAS



34: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/11/28(火) 02:09:44.33 ID:Cjza4N/Vo

結局、卒業するまであの時のことを許すことができなかった。

今となってはもう遠い昔の話って感じだけれど、彼らと二度と会わずに済むんだったらそれがいいな、ってまだ思っている。

以下略 AAS



35: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/12/07(木) 08:13:20.78 ID:CJETi2EHO

***

「親戚のとこで産まれた犬を貰ってきた」

以下略 AAS



36: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/12/07(木) 08:14:31.02 ID:CJETi2EHO

その時は急すぎて気づかなかったんだけど、
あの時以来少しふさぎがちだった私を心配して、
お父さんなりに色々考えた中でペットでも飼おうかってことになったんだと思う。

以下略 AAS



37:名無しNIPPER[sage]
2018/01/05(金) 20:26:35.09 ID:te5pxh/Go
保守


38: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2018/02/05(月) 14:48:50.18 ID:EjuQ6RaZ0

家に居る時間が長くなっていったのはこのころからだったかな。

自宅からそう遠くない女子中学校を受験するために、放課後は部屋に籠って勉強して。
その合間に息抜きとしてハナコと遊んだり、お店の様子をちょっと見に行ったり。
以下略 AAS



39: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2018/02/05(月) 14:49:49.57 ID:EjuQ6RaZ0

あれ以来両親にはいろいろと心配をかけていたし、中学受験したいっていうのも私のわがままだったから、
中学生になったら部活には入らずに少しでも家の手伝いをしようって決めてて。

家事と仕事で二束のわらじ状態だったお母さんの負担を減らしたかったのもあるし、
以下略 AAS



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