90:名無しNIPPER[saga]
2018/03/01(木) 19:47:26.53 ID:NjFxGLD10
問われて、キャスパーは黙考した。
丸っきりの絵空事、というわけではないだろう。ミスタ・Agは<コダール>開発の立役者。
<ラムダ・ドライバ>などという、人の意志を現実に反映させる胡散臭い装置があるのだ。
彼が何を作っていたとしても驚かない。
本当に世界をやり直すことができるというのなら。キャスパーは自問自答するような、小さな声で呟いた。
「僕は、その質問には答えられないな」
『時間が必要かい?』
「いや、そういうことではなくて――単に、どっちでもいいと思いましたからね」
キャスパーの返答を、ミスタ・Agは予想していなかったらしい。YesかNoか、そのどちらかが返ってくると思っていたのだろう。
『どちらでもいい、とは?』
「仮に、この世界の歴史が本来の物からずれているとして、それを正しても僕のやることは変わらない。
仮にアマルガムがなかろうが、冷戦が早期に終わっていようが、人は武器を手に取り、僕達は武器を売り続ける。
どれだけやり直したところで、世界は平和になんてならない。だから、貴方の計画が成功しても失敗しても僕には関係ない。
なら、精々楽な方を選びますよ」
『……残念だよ。まぁ、この勧誘は君がミスタ・Guに着くのを防ぐためのものだったから、
アマルガムを脱退した時点で半ば意味は無くなっていたのだけれど』
「貴方に目を掛けて貰ったのは、光栄と言うべきなんでしょうね。ですが、それも今日まで」
『ああ。そうだね。さよなら、キャスパー・ヘクマティアル』
通信が終る。ホログラムが消え去ったのを確認して、キャスパーはヘッドセットを取り外し、机の上に放り投げた。
背後では銃声が止んでいる。ミスタ・Agが撤退命令を出したのだろう。ネクタイを緩めながら、キャスパーは溜息をついた
「あーあ、アマルガムは結構いい稼ぎ場だったんですが、それもここまでですね。
――ココが言ったのはこういうことか。ミスタ・Ag……とんでもない厄ネタだ。フフーフ、触らぬ神に祟りなし、っと」
「キャスパー、敵さんが何か急に撤退していったけど――あ、こっちも終わった?」
「ご苦労様です、チェキータさん。こちらの損害は?」
「アランがベアリングで頬を切ったくらいかな。あと分かってると思うけど、もうここは使えないわ。
壁中穴だらけだもの。隙間風が酷くて風邪引いちゃう」
「では、さっさと撤収しましょう――我々は次の戦場へ」
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