56:名無しNIPPER[saga]
2017/11/26(日) 02:48:50.14 ID:9ajXHJzP0
「お前が手伝ってくれれば楽だったんだな……」
息切れの隙間から、宗介が恨み言のように呟く。
ラムダ・ドライバの制御は全て宗介の精神力に掛かっていた。
多少はこの機体と機能、そして小うるさいAIのことも理解できてきたつもりだったが、もとより宗介は"有りもしないこと"を想像するのが得意ではない。
ただ力場を発動するだけならまだしも、繊細な制御には数分を掛けた渾身の集中を必要とした。
『私なりにお手伝いはしたつもりでしたが』
「あの"応援メッセージ"のことか? 気が散って仕方なかったくらいだ」
『そもそも、ラムダ・ドライバの発現に必要なのは人間の精神力です。機械である私にはとても』
「減らず口に関しては、俺よりもお前の方がよほど人間らしく思えるがな」
『肯定(アフマーティブ)』
「ふん……」
ため息とも笑い声ともつかない吐息を漏らして、宗介は外部スピーカーをオンにした。
「武器を捨てて投降しろ。いまなら命は助けてやる」
『こっちには人質がいるぜ?』
クルツの通信機から、私兵のひとりであるらしい男の声が響く。どうやら通信機付きのヘッドギアを奪われたらしい。
その脅しを、宗介は鼻で笑って見せた。
「その男に人質としての価値はない。煮るなり焼くなり好きにするがいい。始末してくれるならそれでもいいぞ」
ひでえ、とマイクが拾ったクルツの呟きが漏れ聞こえてくる。
無論、本気ではない。敵の性格を考えれば、ここで徹底抗戦を選ぶリスクは犯さない筈だ。結果として、クルツが無事に解放される可能性は高い。
加えて時間の経過はこちらにとって有利に働く。敵の手駒はもういない。βが到着すればさらなる不測の事態にも対応できる。
(何よりクルツの奴も傭兵だ。いざという時のことは覚悟しているだろう……)
『あいつ、なんか不穏なこと考えてねーか!?』
『落ち着きなさいよウルズ6。安心して、骨は拾うわ』
どうやらメリッサ側の戦闘も停止したらしい。通信から彼女の声が聞こえる。
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