22:名無しNIPPER[saga]
2017/11/22(水) 22:06:12.49 ID:290cDT/E0
◇◇◇
『こちらチームβ、ウルズ8。目標B確保。抵抗無し。損害も無し。すぐに降伏してきたぜ。いま、武装解除状態で車外にでた。
そちらの状況はどうだ?』
「ウルズ2よりウルズ8。こっちも同じ状況よ。標的を確保したわ」
口頭での報告と共に、戦術データリンクが更新された。脅威目標である私兵8人とココ・ヘクマティアルの無力化が表示される。
M9の操縦席の中で、ウルズ2――メリッサはひとつ、大きく息を吐いた。
モニターには、両手を上げたまま雪上車から降りてきたココ・ヘクマティアルと、その私兵たちが映し出されている。
武装は車内においてきたらしく、完全に丸腰だ。
もっとも、情報部からおりてきた事前情報で、彼らが小銃程度の火器しか持ち込んでいないのは分かっていた。
つまり、もとから彼らはASを傷つけられるような手段を持っていないということ。
ミサイルランチャーまで積んでいるマオの機体と比べれば、まさしく蟻と象の関係だ。
(大規模の部隊を展開できないこの環境下。
歩兵同士の戦いじゃ、こちらにも犠牲が出たでしょうしね……多少を無茶をしてでも、ASを使うのは正解よ)
今回の作戦は単純なものだった。8機のM9を2班に分け、目標を捕える。
4機のASによる突貫の雪掻き作業によって、最低限の機動性を発揮できるようにした陣地での待ち伏せだ。
こちらの班は自分と、いつものメンバーである宗介とクルツの二人。さらにそこへクルーゾーがつく形になっていた。
『ウルズ1より各位へ。確保したからといって、油断はするなよ。
この数のM9を用意したのは、厳しい環境下、不測の事態が起こることを考慮してのことだ』
『ウルズ7、了解。周囲の警戒にあたる』
いつもと僅かにパターンの違う塗装を施された<アーバレスト>が、メリッサの視界の端で身じろぎする。
ECSの不可視モードを備えるM9に本来なら迷彩パターンの更新は必要ないのだが、
降雪の中での不可視モード使用はスパークが生じてしまう為、急遽、全機に白い塗装が施されたのだ。
白を基調としていた<アーバレスト>にも改めて塗布が行われたが、
これに搭載されていたAIである<アル>が不平の声を上げたらしく、出撃前に宗介が愚痴っていた。
『毎回、こんな楽な仕事だとありがたいねぇ……さて、さっさと済ませようぜ。回収するのは武器商人だけだったよな?』
57ミリ滑空砲を揺らしながらクルツが声を上げる。彼のM9が示す先には、こちらからの指示を待っている6人の姿があった。
『ああ、私兵の方は捨て置け。だが、さすがに4度目だ。商品を処分した後、ココ・ヘクマティアルの身柄は確保し、本部へ移送する』
『ウルズ6、了解。っつーわけで、そちらの御嬢さんは俺達とデートだ。野郎どもはそこで待ってな』
後半を外部スピーカーから流すと、ココ・ヘクマティアルは存外素直な対応を見せた。
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