103:名無しNIPPER[saga]
2018/03/02(金) 19:16:36.32 ID:FJPDfUmY0
だがそんな心中をよそに、べアール社長がとんでもない発言をする。
「ありがとう、ヘクマティアル。これで秘書にも言い訳がたつ。あいつ、売り切るまで戻って来るなとカンカンでな。
そうだ! お礼にひとつ、ボン太君を差し上げよう! お前のところの護衛に使わせると良い!」
『え゛っ』
濁った声を上げる私兵たちとは別に、ココは自身の顎に手を添えて唸って見せる。
「ふぅむ。広告塔代わりというわけかい? 相変わらずやり手だな、べアール」
「はは、おだてるなよ――で、誰に着させる?」
「そうだな、それじゃあ――」
「おじさんはパスしとくぜ。狙撃することの方が多いし、ポイントマンに持たせてやんな」
「あっ、レームのおっさんずりぃ……お嬢、俺もいいや。狙撃するから」
レームとルツが一抜けする。他の面々も我先にと続いた。
「私も砲兵なので……」
「アクセルやブレーキに足が届きそうにないので……ていうか運転席に座れそうにないです」
「爆弾を見つける時に、勘が働かなくなりそうで」
「ナイフ格闘はリーチが重要です。その短い腕はちょっと……」
ぐるぐるとたらい回しにされるボン太君。(遥か後方で死んでいるトージョは、幸いにして標的から免れた)
その中で、小さな手が自己主張するように挙げられた。手の持ち主は、口の中のストロベリー・キャンディーをかみ砕き、飲み込んでから、
「じゃあ、僕が貰ってもいい?」
なんて、驚天動地の発言を口にした。
その場にいた全員の視線がその人物、ヨナに集中する。
「え、ヨナが着るの? そんなの、そんなの……絶対に可愛いに決まってるじゃないか!」
「お、そっちの坊やか? ふむ、まあサガーラが着てたしサイズは大丈夫か……」
あれよあれよという間に進んでいく話し合い。それを心なしかわくわくした表情で見つめるヨナに、バルメが心配そうに声を掛けた。
「よ、ヨナ君? 本当にいいんですか? あれを着て戦うなんてこと……」
「? なんで戦うんだ?」
「え?」
きょとん、とした顔でそう返してくる少年兵に、私兵たちも疑問符を浮かべる。
「前から思ってたんだけど、ココの船は大きすぎて、たまに手が届かないところがあるんだ。
あれを着れば、きっと届くと思うんだけど。それにちょっと楽しそうだ」
「……あー、ヨナ君。でもべアール社長は、あれを着て戦って欲しいと思ってるんじゃ」
「でも、ココは『受け取る』って言っただけだ」
「それはそうですけど……まあ、ココもヨナ君の頼みならそっちを優先するでしょうしね」
というわけで。
それからしばらくの間、HCLIのタンカー船では、ふもふもと歩き回る少年兵の姿が、本人が飽きるまで見られたという……
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