100:名無しNIPPER[saga]
2018/03/02(金) 19:13:05.66 ID:FJPDfUmY0
南アフリカ、兵器展示会場にて。
ココとその私兵たちは、何とはなしにその中をぶらついていた。天田南博士との約束をすっぽかされた形になり、時間が空いてしまった為だ。
周り中、兵器と武器商人だらけなそんな状況の中。ヨナはふと思い立ったようにココに訊ねた。
「ねえ、ココ。さっき、ここにあるのはほとんど改造キットだって言ってたけど……」
「うん? ああ、その通りだけど、何か気になるかい?」
「ほとんど、ってことは、少しは新しい武器もあるの?」
「多少はね。大抵はコンセプトモデルというか、目新しさが先行してまだまだ実戦では使い物にならないものばかりだが……」
いいながら、ココはそういった兵器が集められている筈の一画を指示した。
遠目から見ても、珍妙な兵器ばかりが並べられているのが分かる区画だが――
その中でも、一際目を引く珍妙なシルエットを目にして、ココは動作をぴしりと停止した。
「……なにあれ」
それは一言でいうなら、動物を模したマスコットキャラクターの着ぐるみだった。
犬だかネズミだかよく分からないような外見。帽子に蝶ネクタイ、そしてつぶらな瞳が特徴的な、チャーミングな外見をしている。
兵器展のマスコットにしては、あまりにも牧歌的過ぎる異色の存在だ。事実、その周辺だけ異様に人気がなかった。
「ネズミのマスコット……ですかね? ほら、ココが好きなミッ○ーマウスの親戚とかじゃありません?」
「馬鹿言わないでよバルメ! ○ッキーは、もっと、こう、可愛いんだから! あんなのとは似ても似つかないって!」
「あれはあれで愛嬌があると思いますが……」
途端に声を荒げたココに気づき、私兵たちもなんだなんだとぞろぞろ集まってくる。そして件のキグルミを見て、誰もが適切な言葉を失った。
否。ひとりだけ、興奮したように声を張り上げた者がいた。トージョである。
「あれは……!? 『ふもふも谷のボン太くん』の主人公、ボン太くんじゃねーか!」
「知ってるの、トージョ?」
「ああ……日本の旧いアニメーションのキャラクターでな。
最高のスタッフと監督を集めて作られた、いまの水準からみても未だ見劣りしないクォリティの作品だったんだ。予算を使い果たして8話で打ち切りになったんだが、惜しいことをしたと思う。ファンの間じ
ゃ第三話でボン太くんが飛来する大量のミサイルを避けまくる伝説の5秒が有名なんだがな、確かに5秒間に100以上のコマを詰め込んだ無茶は相当のものだと思うんだがむしろ俺としちゃ2話のミュージ
カルシーンが見どころだと思うぜあの時代にアニメでミュージカルをやるっていうのはかなり異色というか時代を先取りしすぎていて過激派はボン太君唯一の汚点なんていうんだが何も分かっちゃいねえ
! ボン太君はふもふもの――」
「トージョ、早口で凄い気持ち悪いですね」
バルメの一言で死んだトージョを無視して、ヨナがボン太君に駆け寄った。心なしか少年兵の瞳が年相応の輝きを帯びている気がする。
「うわぁ……! ボン太君……! ……でも、これも武器なのか?」
「くぅ、ヨナが眩しい……! とはいえ、会場案内のマスコットじゃないの? 担当者が空気読めなかった――」
『ふもっふ!』
「喋った! 喋ったよココ!」
突如として喋りだし、それどころかふもふもと動き出した怪しげなキグルミに、ヨナ以外の私兵たちは思わず懐の銃を意識した。
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