292: ◆Bc4KZX4MNU[saga]
2021/08/28(土) 22:15:14.27 ID:1xgoMmmA0
―――【どこか】
大きな陸橋の上、ベンチに座っている熊倉トシ
その隣にいるのは大沼秋一朗
二人の視線の先には―――遊園地
「なんてことない話さ」
「ん?」
「アイツの、京ちゃんのこと」
「……」
徐々に赤くなってきている空
視線の先の遊園地で観覧車が回っている
「因子と因果……因子さえそろえることができればこそ、できることもある」
「再現か?」
「それに近い。けどね、それとはまた違う」
語ることは一つ。語りたいことは一つ。
ただそれを真っ直ぐに伝えるのは簡単だが、それを真っ直ぐ実現する難しさ
それでも彼のため、彼女は出来うる限りのことはした
それが失敗に終わろうと結果としては、それほど変わりはないと熊倉トシは理解している
「それでもね、私は京ちゃんと―――京ちゃんを愛したアイツに幸せになって欲しい」
「……溺愛だな」
「こんなあたしに付き合ったあんたも大概だよ」
「弟子だからな、それなりに世話してやんねぇと」
そう愚痴るように言う秋一郎の顔には、確かに笑みが浮かんでいた
故に、熊倉トシもふっと笑みを浮かべて空を見上げる
因子は揃っているのだ。“悪霊の残した残滓-因子-”は拾い上げた
あとは―――因果と成すだけなのだ。
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