32: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2017/11/16(木) 01:17:11.48 ID:4TBLGcT+0
○
「……お待たせ」
「大丈夫。今来たとこ」
嘘ばっかり。
「それで、ご飯ってどこ行くんだ?」
「そんなに大したものじゃないけど、お祝いだからね。ちょっとしたレストランに」
「え、ドレスコードとか、そういうの。何も考えてなかったんだけど」
「あ、そこまでじゃないから大丈夫」
「よかった……」
「そうそう、ささやかだけど、これ。神谷さんに」
プロデューサーは後部座席に手を伸ばして、大きな包みを取る。
そのままあたしに差し出して「デビューのお祝い」と言った。
「……いつもスポドリもらったりしてるし、そんなのいいのに」
「頑張ってる神谷さんに、なんかできないかなぁ、と考えた結果です」
いつまでも遠慮していても話が進まないし「開けてもいい?」と聞いて、包みに手をかける。
出てきたのは、そこそこの大きさの長方形の箱だった。
「靴だ」
「そう、靴」
「……もしかして、ダンスシューズ?」
「開けてないのによくわかったね」
「でも、サイズとか……あ、衣装の採寸したときの?」
「正解」
「職権濫用じゃねーか」
「そこは目を瞑ってもらえれば」
「……その、ありがと。これからも頑張るよ」
「どういたしまして。神谷さんの頑張りは十分見てるから、信頼してる」
「うん。……でも、奈緒な」
「え?」
「神谷さん、っての他人行儀でなんつーかアレだし、奈緒って呼んでくれよ」
「じゃあ、奈緒」
「よし」
変なやり取りだった。
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