神谷奈緒「ステップバイステップ」
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10: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2017/11/16(木) 01:03:46.40 ID:4TBLGcT+0


駅までで大丈夫だと言ったんだけれど、結局押しに負ける形で家まで送ってもらって、あたしは帰宅を果たす。

体は動かしていないはずなのに、リビングの方へ「ただいま」を投げた途端に、どっと疲れが押し寄せた。

ちょっとだけ、横になろう。

そう思って自室へ向かい、そのドアノブに手をかけたところで、母があたしを呼んだ。

タイミング悪いなぁ、なんて思いながら「はーい」と返事をした。

リビングに到着して、あたしが用事を尋ねるより先に母が「じゃーん」と後ろ手に隠していた紙袋を掲げた。

「え、え、何?」

「開けてみて」

受け取った紙袋は想像より重くて、ずっしりとした感覚が腕にのしかかってきた。

言われるがままに、紙袋を開いて中を覗く。

そこそこの大きさの長方形の箱が入っていた。

「もしかして、靴?」

「もう。開けてみて、ってば」

中身は教えてくれないみたいで、母は相変わらずにこにことしている。

紙袋から箱を出して開いてみる。

ぴかぴかした靴が入っていた。

ハイカットのスニーカー、だろうか。

片方を取り出して手に取りじっくりと眺めてみる。

通常のスニーカーよりもしっかりした作りで、最初に抱いた印象は、なんかゴツい、というものだった。

くるくると回して眺めていき、最後に靴底を見たとき、言い様のない既視感に襲われた。

至る所に滑り止めがついていて、ゴツい靴。

そこまで考えて、一年前の球技大会前、ある日の練習の記憶が蘇った。

ああ、そうか。これ、バスケットボールシューズに似てるんだ。

そして、今のあたしに必要な靴と言えば。

「……ダンスシューズ?」

あたしが聞くと、母はより一層にこーっとして「当たり!」と言った。



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