8:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 18:45:43.69 ID:AW4FyFFm0
帰りの電車でスマホを開くと、いくつか非通知の着信履歴が見えた。
二時間おきぐらいに規則正しくかけられている。
しつこいな、あいつ等も。
"流天"がどうとか訳わからんことを言ったが、職を辞す理由ははっきり別にある。
アイドル界は世間が思っているほどに清廉潔白な業界ではない。
いや、世間も馬鹿じゃないし薄々気がついているとは思うけれど。
放送業界とも広告業界とも通じているし、その間では泥臭くて生々しい交渉が日常茶飯事に行われている。
彼等はアイドルを商品としてしか見ていないし、彼女らの価値は常に数字でのみ判断される。
いつも隣にいて、少なからずその人となりを知るプロデューサーとしてはなかなか厳しいものがある。
厳しいことはそれ以外にもある。
通じているのは、表の業界だけに限らないということだ。
非通知の並ぶ着信履歴を眺める。
重苦しい気持ちが、澱のように堆積していく。
俺はスマホを捨てて手帳を開いた。
有香との次のレッスン日が二重丸で囲まれていた。
それが少し、救いになった。
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