36:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 19:41:14.31 ID:AW4FyFFm0
「どうして、何も言ってくれなかったんですか」
彼女の歩調は変わらない。ゆっくりと大地を踏みしめて近づいてくる。
一歩ごとに彼女の内勁が強まっていくのが感じられた。これは、練勁――。
「おい、お引き取り願いなっ!」
恰幅のいい組長(会長?)が竿を投げるように黒服たちをけしかけてきた。
近くにいた数人が金属バットや鉄パイプを手に迫りかかってくる。
彼女の体を砕くべく渾身の痛打が放たれる。少女にも容赦ないのすげえな。しかし、
どんっ。
震脚。からの跳躍。
振りかぶった姿勢のまま黒服たちは石像のように、いや、まさしく石像となった。
彼らの勁は完全に崩され、大道芸人の一員と化した。お金を渡されるまで動かない。
彼女は空高く飛び上がり、空中で一回転したかと思うと、すたっと軽い調子で着地した。
黒服たちの集う、敵陣のまっただ中に。
「そんなに、私が信用できなかったんですか」
彼女の呟きだけが、奇妙に落ち着き払っていた。
仮面の下、その表情はわからない。
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