1:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:47:04.33 ID:jSnZpyIz0
――部室――
八幡「…………」
雪乃「…………」
八幡(ダメだこいつ……早く何とかしないと。いや、待て)
八幡(これは由比ヶ浜渾身のボケなのかも知れない。ボケなら当然つっこみをいれてやるのが人情というものだが)
八幡(いかんせん、由比ヶ浜のことだ。本当に文明の利器である電池の存在を失念してしまったとも考えられる)
雪乃(由比ヶ浜さん……いきなり何を言っているのかしら)
雪乃(電池とは何か、彼女はそんな簡単なことまで分からなくなってしまったというの?)
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2:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:47:52.96 ID:jSnZpyIz0
雪乃(いいえ、この考え方はあまりに由比ヶ浜さんの知性を蔑ろにしてはいないかしら)
雪乃(もしかすると由比ヶ浜さんは、電池を通して何か哲学的な問いかけをして、私たちを試しているのかもしれないわ)
八幡(待てよ。そういやこの前、化学の授業で電気分解出てきたよな。こいつ、よもや授業がきっかけで電池の仕組みについて興味を持ったのではなかろうか)
3:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:49:08.72 ID:jSnZpyIz0
結衣「あれ、ヒッキーもゆきのんもどうしたの? 急に何か考えこんじゃって」
雪乃「いえ、何でもないわ。由比ヶ浜さん、電池のことが知りたいのよね」
結衣「あ、うん……そうなんだけど……」
4:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:49:58.85 ID:jSnZpyIz0
雪乃「ちょっと言葉足らずだったかしら?」
雪乃「由比ヶ浜さん、今の説明で分からないところがあったら何なりと質問してもらってかまわないわ。一つ一つ、丁寧に答えてあげるから」
結衣「いや、その……違くて」
5:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:51:03.67 ID:jSnZpyIz0
雪乃「違う、とはどういうこと?」
結衣「あのね、ゆきのん……そういう電池の話じゃなくて」
八幡「もう少し、とっつきやすいところから入った方がいいんじゃねぇの?」
6:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:51:54.96 ID:jSnZpyIz0
雪乃「確かに、ちょっと私の説明は堅苦しすぎた感があるかもしれない。悪かったわ、由比ヶ浜さん」
結衣「う、ううんっ! ゆきのんが謝ることなんて……ないし」
雪乃「では、どういった形で電池を調べたらいいのかしらね。図書室で電池関連の書籍を借りることにしましょうか」
7:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:52:21.08 ID:jSnZpyIz0
結衣(何か馬鹿にされてるような気もするけど……。でも、二人ともあたしのこと凄い考えてくれてるんだ。これってちょっぴり……嬉しいかも)
結衣「……って、ちょっと待って! だからそうじゃな」
八幡「俺に考えがある。『由比ヶ浜がとっつきやすく、気楽に電池のさまざまな情報を調べられる方法』」
8:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:53:30.73 ID:jSnZpyIz0
カタカタカタカタ
結衣「電池という言葉は、『電』気をためる『池』ということばからきている。へぇ〜、あれ、池なんだ」
八幡「池というよりは桶とか樽のような見た目だけどな、電池」
9:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:54:38.29 ID:jSnZpyIz0
雪乃「この図の通り、原始的な電池はガラス製などの容器の中に硫酸と金属片を入れて電気を生じさせていたの」
八幡「なるほど。元は液体をためておく容器で、それが文字通り『池』だったんだな」
結衣「し、知らなかった!」
10:名無しNIPPER[sage]
2017/11/13(月) 05:55:12.69 ID:lhfWD+QBO
電池「俺が全部教えてあげるよ結衣ちゃんフヒヒ」ポロン
11:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:55:35.13 ID:jSnZpyIz0
カタカタカタカタ
雪乃「電池切れ。乾電池、蓄電池等が放電しきってしまった状態」
八幡「ああ、まあそうだな。その通りだ。電池が切れてるんだからな」
12:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:56:54.35 ID:jSnZpyIz0
結衣「活発に動いてた動物が急に無気力になっちゃうことも電池切れって言うんだって」
八幡「ほう、なかなか言い得て妙な例えだな」
雪乃「なるほどね。比企谷くんが常に覇気のない目で力なく椅子に腰かけていたのは電池切れだったということかしら」
13:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:57:51.13 ID:jSnZpyIz0
八幡(え、何なの……俺いつから電池になっちゃったの?)
八幡(つかその本気で可哀想な物を見るような目やめてくれませんかね。ちょっと悲しくなっちゃうだろ……)
八幡(好きなように使われるだけ使われてまさしくゴミのように捨てられる使い捨ての電池……)
14:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 05:58:56.56 ID:jSnZpyIz0
>ふにゃ・・
雪乃「…………」
結衣「この猫……さっきから全然動いてないけど大丈夫なのかな。まさか死んでるんじゃ」
15:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 06:00:41.47 ID:jSnZpyIz0
八幡(……とまあ、こんな感じで)
八幡(俺たちは、以前『千葉県横断お悩み相談メール』を受け付けるために貸与されたパソコンを使って、『電池』関連の情報を収集しているだけなのだ。まあ、だいぶ脱線もしたがな)
16:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 06:03:14.65 ID:jSnZpyIz0
八幡(元来、由比ヶ浜のようなイケイケリア充たちは、ネットを専ら他人とのつながりを維持するツール、連絡手段として利用している)
八幡(由比ヶ浜がこういうふうに、『電池』のような特定の関心ごとについて、これだけ長い時間ネットで調べた経験はたぶんないのではないか)
八幡(そして、その隣には雪ノ下がいる。由比ヶ浜とパソコンを共有して使いながら、由比ヶ浜の興味を引きそうな電池ネタを引っ張り出し、その場で対話を展開)
17:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 06:04:53.53 ID:jSnZpyIz0
結衣「ねぇヒッキー。ヒッキーってば!」
八幡「お、おう!? 何だ? ちょっとぼんやりしてたわ」
雪乃「まだ電池切れが続いているようね。それとも漏電かしら」
18:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 06:07:30.80 ID:jSnZpyIz0
八幡「……お、おう。どう……いたしまして」
雪乃「今回の提案は、あなたが考えたにしては信じられないほどまともで悪くないものだった」
八幡「雪ノ下……」
19:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 06:08:43.86 ID:jSnZpyIz0
八幡「……ふう」
八幡(もし、こういう円満な解決策を、俺が当たり前のように選択できるようになったとしたら)
20:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 06:09:13.77 ID:jSnZpyIz0
――正面玄関――
結衣「それじゃ、またね! ヒッキー、ゆきのん」
八幡「おう、またな」
21:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 06:10:00.08 ID:jSnZpyIz0
結衣(今日は3人で活動してるって感じで凄い楽しかった〜)
結衣(いつもはヒッキーもゆきのんも自分の本ばっか読んでてあんまりしゃべらないし。あたしは暇を持て余してケータイ触ってばっかだし)
結衣(またこういう日があったらいいな)
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