8: ◆cgcCmk1QIM[saga]
2017/11/12(日) 20:24:48.09 ID:W1uOFZeg0
「別に芸能活動が困難だというわけじゃない。『ウサミン』が続けられないというだけだ―――佐城の言うとおり、芸能活動を続けたいなら道はいくらでもあるだろう」
残ろうと思うなら、いくつもの道がある。
雪美ちゃんの主張を認めて、トレーナーさんが頷きます。
「それなら…!!」
「だが、当の安部には、そうする気が全く無い」
雪美ちゃんを手で制して、トレーナーさんははっきりとそう告げました。
一瞬、雪美ちゃんが息を呑むのが解ります。
「『ウサミン』をステージの上で実現できなくなる日が来たら、芸能活動から身を引く。それは覆しようのない安部の決心だ」
ここまで淡々と言葉を紡いでいたトレーナーさんの口調に、初めて苦いものが混じります。
「実のところ、もう激しいステージは続けられない。方向転換が必要だ―――と告知したのは、半年も前の事だ。だが、彼女はそれを聞き入れず、一瞬でも長く『ウサミン』を続ける道を選んだ」
やりきれない、と言うように雪美ちゃんから目をそらし、白く冷たい冬景色の窓に視線を投げるトレーナーさん。
「…周りに出来ることはもう、それを見守ることだけだったんだよ」
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