2:名無しNIPPER
2017/11/12(日) 16:58:24.31 ID:PAb0ZZtSo
◇
もしもひとつだけ。
ひとつだけ俺の人生に於ける大きな失敗を挙げるならば、それはきっと”扉”を見つけてしまったことかもしれない。
仕事終わりの帰り道。太陽は既に落ち、チカチカと頼りなく街頭は点滅している。
寂れた商店街から少し外れた路地裏から放たれた一瞬の輝き。
それは、ちょっとした好奇心だった。
導かれるように向かった先にあったのは扉だった。
敢えて言うならば全てが鏡で作られた”どこ○もドア”。
どこかへ繋がる訳でもなく、ただその扉は俺の姿をクッキリと映し出していた。
たいして人気のない中華料理店の室外機の側にそれは屹立していた。
「なんだこれ、そもそもノブ回るのかよこれ」
冗談で手を掛けたそれはなんの抵抗もなく回って少し関心した。
「……よく出来てんじゃん」
開いた扉を前に後ろに、軽く動かし、それを俺は通り抜け、後ろ手に扉を閉めた。
――通り抜けて、しまったのだ。
「扉の先は異世界でしたぁー。なんてこともないわけでして」
おどけて、振り返る。
そこに、既に扉はなかった。
影も形も。ただ月明かりだけが辺りを妖しく照らしていた。
「……あ、ありゃ?」
◇
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