10:名無しNIPPER[sage]
2017/11/10(金) 01:24:36.29 ID:cJDf0ENL0
奏「それからは…」
?「奏さん、そろそろお時間です。」
奏「わかったわ。」
野暮な人ね。最期の時くらいもっと思い出話をさせてよ。
奏「ねぇ、あなた。」
あなたの安らかな笑顔のしわしわな肌に手をそっと当てる。
奏「なんで…、なんで…私より先に逝くのよ…。」
こんなことを聞いといてだけど、それが正解かもしれないわね。
だって私が先だったらあなたは立ち直れないでしょう?
奏「妻をのこして先に逝くなんて、本当にダメな夫で、本当にお馬鹿さん…」
白くなったあなたの肌をそっと撫で上げる。
奏「はぁ、ほんと、なんでこんな人を好きになったのかしら。」
その答えは単純で、すぐに自分で頭に浮かんで、「あぁ」と声をもらす。
「そっか、私もあなたと同じくらいお馬鹿さんだったわ。」
その言葉を放った瞬間、あなたが笑ったような気がしたの。
「奏は本当にバカだな。」
そういわれた気がして、自然と涙が溢れてた。
目尻からおちた雫はシワだらけになった私の頬を伝い、やがて顎の先にたどり着く。
行き場を失った雫はゆっくりとあなたの唇に落ちて弾けた。
私はそれを拭くように、あなたの唇に口づけをした。
人生最期のキスで、あなたとのさよならのキスは、ファーストキスに負けないくらいしょっぱかった。
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