橘ありす「二人ぼっちのアリス」
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84: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:17:44.82 ID:/aq2I7elo
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 卒業式当日。
 古くなった空の層が剥がれかかっているような曇天で、ひどく冷え込んでいた。
 体育館には大きなジェットヒーターがいくつも置かれ、轟々と絶え間なく騒音が続いた。
 そのせいで、卒業証書授与式では声を張り上げなければならず、この酷寒の中にあって校長先生は汗をかいていた。

 私はピアノを弾く手が冷えないよう、入念に指を動かした。
 校歌と合唱曲に加えて、五年生の「六年生を送る歌」でも伴奏を任されている。
 教員にとっては一年に一度の行事だが、生徒やその保護者にとって、卒業式は一生に一度のものだ。
 そのことを意識すると、いやでも緊張する。


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