橘ありす「二人ぼっちのアリス」
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51: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:24:19.38 ID:/E20kLoAo
 ――――

 秋の落とした陰から煙が立ち上るように、冬がやってくる。
 中には、すでに湿っぽくなっている教員もいて、

以下略 AAS



52: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:24:50.86 ID:/E20kLoAo
「冬休みは兵庫のおばあちゃんの家へ行くんです」

 終業式のあと、ありすはタブレットを胸にウキウキとした様子で言った。

「兵庫ねぇー。雪遊びとか、する?」
以下略 AAS



53: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:26:08.05 ID:/E20kLoAo
 ありすの後ろ姿を目で追っていると、思わず鼻がツンとした。
 あまり感傷的になる質ではないのだが。

 頑張り屋の彼女なら、きっといつか、夢を叶えられる。
 けれど、教師は、損だ。
以下略 AAS



54: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:27:08.01 ID:/E20kLoAo
 しかし、冬休みの二週間は、そんな感傷に浸る暇もなかった。

 卒業式や、新学期のカリキュラム、来年度の準備など仕事は山積みだ。
 それに加えて実家への帰省。日々の雑事もなくなるわけではない。
 かえって、普段より忙しいくらいで、バタバタ働いているうち、あっという間に冬休みは終わってしまった。
以下略 AAS



55: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:28:10.41 ID:/E20kLoAo
 冬休み明けの始業式。
 私はすっかりヘトヘトの状態で登校した。

 教室へ入ると何やら騒がしい。
 見ると、何やら雑誌を回し読みしているようだった。
以下略 AAS



56: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:29:15.88 ID:/E20kLoAo
 はて――、事情が飲み込めないうちにチャイムが鳴った。
 騒ぎをよそに、当の本人――ありすはいつの間にやら登校してきていた。
 ちらちら視線を投げかけるクラスメイトなんか、まるで見えていないように平然としている。

 私はどうも、腑に落ちないような気持ちで半日を過ごした。


57: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:29:56.99 ID:/E20kLoAo
「アイドル事務所の方に、声をかけられたんです」

 放課後になってようやく雑誌のことを訊くと、ありすはこともなげに言った。

「じゃあ、ありすちゃんはアイドルになるの?」
以下略 AAS



58: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:31:09.04 ID:/E20kLoAo
「どうして?」

「本当は、別の名前でデビューするはずだったんです」

「別の? 別の名前って?」
以下略 AAS



59: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:32:46.72 ID:/E20kLoAo
「先生もそれは同じ気持ちだけどな……」

「先生まで。みんな、勝手です。私の気持ちなんて、全然考えてくれない」

 ありすはがっかりしたような顔をして、それから、申し訳なさそうに言葉を続けた。
以下略 AAS



60: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:34:12.09 ID:/E20kLoAo
 橘ありすがアイドルに。

 そのことで、クラス全体がどことなく浮き足立っていた。
 クラスだけでなく、学校中が彼女の話題でもちきりだった。

以下略 AAS



61: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/09(木) 20:35:31.50 ID:/E20kLoAo
 さて、私は台風の目の中に居て、平生通りに授業をこなした。
 そうするより他ない。

 台風の目たるありすもまた、淡々と学校生活を送っていた。
 彼女の話では、仕事やそれに伴うレッスンが本格的に始まるのは春以降。
以下略 AAS



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