98:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 03:54:48.61 ID:grI1dH9y0
>>97
おもむろにサンディの前で屈んでみた。案の定、彼女は意図が分からぬようで。
頭にクエスチョンマークが浮かんでいるのが想起される。
「キリンの所までちょっと距離があるから、背中に乗っかっておいで」
「ふぇっっっ!?」
目を丸くして驚いている。まぁ今までの傾向から、すぐすぐ乗らないであろう事は予想していた。
「はい、じゅーう、きゅーう、はーち……」
「あ、あわわ……!」
謎のカウントダウンをしてみる。もちろんゼロになっても何も起こる筈など無い。
だが急に始まった事によりサンディはあわあわと焦っている。
残りカウントが五秒を切ったところで、意を決したような声が後ろから聞こえてきた。
「えいっ!」
という掛け声と共に、背中に筋張った感触を覚える。
首元に締まる細い手、後頭部に感じる顔の輪郭骨。
彼女が勢いよく飛び乗ってきたようだ。バランスを崩さなかった自分を少しだけ褒めたい。
立ち上がってみると本当に何か背負っているのか疑わしいほど負担もなく。有り体に言って軽すぎる。
冬の身支度で先日押入れから引っ張ってきた羽毛布団のほうがよほど手ごたえがあった。
背中でサンディが狼狽しているのが分かる。腕に抱えた足元がバタバタしているから。
「あ、す、すいません……。 重いですよね、重いですよね!! すぐ降りますから、調子に乗ってすいません!」
「サンディ、そのまましっかり掴まっててね」
「へ?」
足を腕にかっちり挟んで固定したまま、それいけと言わんばかりに馬になった気持ちで僕は走り出す。
うひゃぁ、と可愛い悲鳴を聞きながら、そのままキリンが見物できるコーナーを目標に駆け出していた。
年端もいかない子を背中に抱えたアラサー男子。
傍から見たらどんな絵面になっているだろうか。
犯罪の香りだけはしませんように。
何と言われようと今くらいは彼女の為に只のお兄さんになってやる。
動物園にいる間くらい、普段の渋くてダンディを纏うハードボイルドな自分は休憩しておくことにした。
598Res/293.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20