546:名無しNIPPER
2020/07/02(木) 20:16:05.75 ID:xBNddiV40
「サンディ、ハードボイルドが生きる時間帯って知ってるかい?」
「いえ……分からないです……」
「ハードボイルドは真夜中に生きているんだよ」
ハードボイルドは生き物だったのか。
などと一瞬思ったがそうではなく、恐らく活動時間帯の事を指しているのだろう。
「だからね、サンディ」
お兄さんはくしゃり、と私の髪を撫でてくる。
「ハードボイルドたる僕は真夜中の世界にいるからさ」
「逃げてきたんじゃなくて、僕の所に走ってきたと思えばいいさ」
あの歌を聞いて、原因の分からない気持ちを抱えていた私は、
ようやく泣いていた意味を理解する。
あの場所から、この世界から、逃げ出したかった気持ちの後ろめたさを
全て包んでくれるような言葉を貰ったような気がした。
この人は、どうして私の事が分かるのだろう。
私でも分からない所を、分かってくれるのだろう。
色々な感情が混ざり合い、何も思考が出来なくなって。
私はふっと立ち上がり、お兄さんの額を右手で捲り、
そこに唇を当ててみた。
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