50:名無しNIPPER[saga]
2017/11/09(木) 23:12:53.01 ID:o6ummrG70
ハードボイルドの朝は早い。
東雲の空に有明の月が少しだけ白を残す頃、僕はゆるりと目が覚める。
カーテンを開けると未だに外は静かなまま。静寂の帳があける前の時間帯。
今日はソファで眠ったので、少し姿勢が悪い寝方をしていたようだ。背伸びをすると軟骨が音を立ててくる。
くあぁ、と軽く欠伸を噛み潰すと、緩い虚脱感に抱かれているような心地良い気分を覚える。
寝起きで覚束ない足取りのまま、事務所の戸棚からコーヒー豆を取り出した。
それをミルで砕くと芳醇な香りが広がり、目覚まし代わりの気付けになってくれる。
今日の豆は粗挽きで仕上げてみた。コーヒーメーカーを起動させて、夜明けの一杯としけこもう。
出来上がるのを待つまでの間に微睡のゆりかごに揺られていると、ぴーぴーと機械音が聞こえてきた。
少し温めておいたカップにコーヒーを注いで、鼻先に近づけてみる。
ほろ苦さを醸し出す匂いが鼻腔をくすぐる空気を楽しみ、そのまま口元へ。
ずずっ、と一啜り。
これぞ朝の醍醐味。美味しい以外の感想なぞ野暮というものだ。
そしてそのまま淹れたてのコーヒーを嗜むため、次は一口目よりも少し多めに含んでみると。
< ええええぇぇぇぇぇーーーーーーーー!!!!
寝室からの絶叫でそれを盛大に吹き出した。
ハードボイルドな朝は終わりを告げたようだ。
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