365:名無しNIPPER[sage saga]
2018/04/21(土) 23:34:21.12 ID:aP2GD9YT0
悶えるのを耐え続ける怪しげな大人たちに囲まれている。
そんな小さな地獄絵図を露知らず、サンディは猫の観察を続けている。
猫の挙動や仕草を真似つつ、ノートに何某かをカリカリと綴っていた。
書いている内容に全く想像がつかないのがまた何とも言えない。
ふと、あの子のいる空き地が薄暗くなった。
よくよく見たら空き地だけではなく、自身のいる辺り全体がどんよりとしている。
空を見上げると厚い雲が太陽を遮っている。
すん、と鼻腔をくすぐるのは仄かな梅雨の香り。夕立の顔(かんばせ)が上から覗き込んでいる。
それに感化されたかのように、遠雷がゴロゴロと重い音を響かせた。
雨が降り出すのはそう遠くないだろう。
サンディもそれに気づいたのか、ポシェットにノートをしまいこみ、帰宅の準備を始めている。
僕と対面側の女性もそそくさと帰り支度を整え、その場を後にした。
帰路に着く自身の脳裏には、先ほどの空き地で過ごしていたサンディの情景。
彼女の無邪気なその様に、しとど濡れるアスファルト以上に僕の心は潤っていた。
なんだか小さな世界に蔓延る幸せが彼女を包んでくれているようで。
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