312:名無しNIPPER[saga]
2018/01/20(土) 00:08:37.57 ID:Qhwvu5580
部屋の窓から見える敷地に、桔梗の花が濃紫の花弁を慎ましく覗かせていた。
梅雨の空けたこの時期は吹く風みなに湿気が纏わりついているような気がする。
その風色が頬を撫でると涼やかさを少し感じた。
本格的に始まる夏が一歩一歩近づいているような兆しで、
緩やかでも確実に四季が巡っているのだと再確認できる。
朗らかな気持ちに流され軽く背伸びをしようと手を伸ばす。
ずきり、と右の肘が少しだけ疼いた。先月の怪我が未だ完治していないようだ。
この手の傷は何度か負った事がある。手酷いものではないので、そのうち治るだけでも良しとしておこう。
そのまま軽くストレッチでもしようかと思うと、不意に後ろから呼びかけられる。
「お兄さん、今日も行ってきます」
声のした方向を向くと、そこには少しだけ日に焼けた健康的な肌色の少女が居た。
名前はサンディ。去年の秋から一緒に住んでいる同居人だ。
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