29:名無しNIPPER[saga]
2017/11/07(火) 09:28:46.63 ID:lfj9bXFJ0
「……綺麗」
届いた特上寿司を見た彼女の感想だ。
美味しそう、ではなく、綺麗というのがまた何とも奥ゆかしいというか。
薄いピンクの霜降りが垂涎を誘う大トロ、こんなに並んでいるのは自分でもほとんど見た事がない。
イクラが宝石と喩えたのは一体誰だったか。今なら非常に共感できる。
眺めているだけで垂涎を誘う素晴らしい光景、お預けのままでいるのはあまりに惜しい。
「よし、では一緒に食べよう」
「?」
サンディは首をかしげてこちらを見てくる。
はて一体どうしたのか。
「一緒に食べても、宜しいのですか?」
「いいよ。むしろ君に食べてもらいたいから準備したんだ。遠慮はダメだぞ」
「……すいません。あまりにも普段と違う環境なので、その、どうしていいのか分からなくて」
「うん。 これから少しずつ慣れていけばいいさ」
そう言いながら、彼女の頭をくしゃりと撫でてみる。
こそばゆそうな、でもどこか嬉しそうな顔で撫でる手を享受してくれた。
「では、いただきます」
「い、いただき、ます……?」
自分が手を合わせるのを見たサンディは、その仕草を真似たのちに寿司に向かって頭を下げる。
そう。美味しい物を食べるという当たり前の日常。いや、寿司は当たり前ではないが。
人が日々の中で過ごすそんな幸せに、少しずつ、慣れていってほしい。
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