193:名無しNIPPER[saga]
2017/11/23(木) 03:18:56.14 ID:uKzXp4eX0
魔法を見た。
夕暮れの薄暗い世界が、色彩鮮やかに目映く輝く瞬間。
もみの木の頂点に大きなガラス細工の星が飾られていて、
そこから天の川みたいな煌びやかさでライトが掛け降ろされている。
明るくなった影響で周りにいた人々の顔も照らされていく。
道行く人、誰かを待っている人、スーツ姿であくせく歩く人。
みんなが笑顔で包まれていた。
世界が平和でありますように、と。
そんな事が聞こえてきそうな、優しい光。
「綺麗ですね、お兄さん」
「うん」
イルミネーション、というものらしい。
生まれて初めて見た私は、感嘆の声を上げるほかなかった。
こうして見つめているだけで、胸の奥底がじんわりと温かくなってくる。
ふと横にいるお兄さんを見上げてみると、目が合ってしまった。
ずっと私を見ていたのだろうか。などという想い上がりを抱きそうになってしまう。
お兄さんは優しい目を薄くたわませて笑顔を向けてくれる。
じんわりと温かかった胸が、心拍数の上昇と共にどんどん熱くなってきた。
私は何故だか恥ずかしくなって、そっと俯く。
顔が見れない代わりに、お兄さんと繋いでいた手を少しだけギュッと握ってみた。
季節は十二月。年の瀬が背中を突いていく頃。
クリスマスという日まであと一週間。
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