127:名無しNIPPER[saga]
2017/11/14(火) 08:48:10.82 ID:OiSFZpw30
その日の夜。
私一人では広すぎるベッドが、有効に活用されるようになった。
「ん、そっちは狭くない?」
「は、はい……」
私の横にお兄さんが寝ている。
お風呂上りで石鹸の香りがする。
なんだか妙にそわそわして、顔がまともに見れない。
思わず掛け布団の中に頭まで埋まってみる。
「顔ださないと苦しくなっちゃうよ」
「あ、す、すいません……」
お兄さんから引きずり出された。
確かに少しだけ息苦しくなったので、ぷはっ、と声が出てしまう。
これは諦めるしかないのだろう。
「お、もう良い時間だね、そろそろ寝よっか。電気消すよ」
「分かりました」
お兄さんが手元のリモコンで消灯ボタンを押すと、部屋がオレンジ色の豆球で薄暗くなった。
顔が見えなくなる分、気恥ずかしさは緩くなるので有難い。
ふと頭に手の平の感触を覚えた。お兄さんが撫でてくれている。
「サンディ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
私は夢を見ない。
恐ろしい夜が早く過ぎ去りますようにと願いながら目を瞑り、そのまま気づけば朝になっている。
夢で起こる事柄はどれもひどいものばかりで、いっそ見なくなればいいと思ってから随分経った。
私はいつも夜に電源が落ちて、朝に電源が勝手に点く機械のようなものだ。
何某かの夢を見ているのかも知れないが、思い出すつもりもない。
でも今日は。
今日みたいな幸せな日は。
夢をみたいな、と生まれて初めて思った。
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