30:名無しNIPPER[saga]
2017/11/16(木) 23:06:03.82 ID:OJo9ffcO0
最後に『君には期待をしている』と、言った後にTは奈緒の側から離れていった。
遠くに離れていくその背中を、奈緒は呆然としながら見送る。何かを考える余裕は今の彼女には無かった。
「アイドル……か」
ぼそりとそう呟いてから、奈緒は貰った名刺に再び目を落とす。
それからため息を吐いた後、本日二度目となる言葉を口にした。
「……はぁ、どうしよう。どうしたら、いいんだろう」
そんな問い掛けを投げ掛けた所で、答えは誰からも返っては来ない。
道行く人々は皆、自分の行き先に向かって歩き、そしてどこかに消えていく。
奈緒が求める答えを告げようとする者など、どこにだっていなかった。
「この人の事、本当に信用してもいいのかなぁ。はぁ……全然分からないや」
唐突に降って湧いた問題に対し、頭を抱えて奈緒は悩む。出口の無い迷宮を彷徨うが如く、延々と悩み続けるのであった。
それから数週間後。ようやく答えを出し、決意を固めた奈緒はCGプロダクションの事務所を訪れ、Tと再開する。
そして彼に対して歯切れ悪くもこう告げるのだった。
「べ、別にアイドルには興味は無いけど、せっかくだからなってやってもいいよ」
これが奈緒とT、二人の初めての出会い。まだ複雑な関係に発展する事も無く、真っ新で穢れも無い状態。
この時の関係に戻れたのなら、彼はどれ程に幸せなのだろうか。彼女はどれ程に不幸せなのだろうか。
結末を知らないからこそ、二人は突き進んでしまう。希望では無く、絶望のゴールに向かって真っ直ぐと。
その先に希望や夢の詰まった未来を信じ、それを願って歩いていくのだった。
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