6: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/10/29(日) 23:40:25.20 ID:UMuyyOtY0
テレビ局に着き、玄関から駐車場まで車を回そうとしていたら、内ポケットに入れておいたスマートホンが震えた。運転中で出ることが出来ないが、十中八九奏からだろう。
少し遅れてしまい催促されているのか、それとも「今終わったから送迎を求む」という旨のメッセージか。後者であって欲しいと思いながら、前者であろうそれの言い訳を考えながら車を動かす。
駐車場に着くと、一人の陰が見えた。コートとマフラー、帽子にメガネと、今日送り届けたままの姿の奏がそこにいた。
雪のかからない場所の柱にもたれかかって、スマホの画面を見ていたが、車が見えるとそれをすぐに閉じ、身体を縮込ませながら小走りで向かってきた。
助手席の扉を開け、飛び込むように、外の寒さから避難する様に座り込まれる。
「待たせて悪かった」
「…本当に、待ちくたびれたわよ」
コートとマフラーを外しながら、奏にそう言われる。車内の時計は、彼女との約束の時間を10分ほどオーバーした時間を表示しているし、彼女の顔と耳は寒さから赤くなってしまっている。この寒空の元、10分以上待たせてしまったことが本当に申し訳ない。
「…悪い」
「…いいわよ、こんな雪だもの。遅れても貴方のせいじゃないわ」
「…」
俺は口をつきかけた言い訳を呑み込み、車を再発進させた。
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