17: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/11/02(木) 01:50:48.17 ID:VDLHcmoz0
機嫌が直った奏に、今日の収録の事を聞いた。ドラマの番宣役としてバラエティに出演し、中々に手応えがあったと言うことだ。
それを聞いて少し安心した。奏は、バラエティ番組などをあまり好まない…一度共演した、どこの誰ともしれないともしれない馬の骨のような芸人にセクハラまがいのことをされたことがきっかけだろうが。
しかし、今ではそれを軽く足払えるようになった。むしろ相手をダシにして自分の魅力を再アピールする様なこともしている。今では奏に恥をかかせられたくないと、調子に乗った発言をふっかけるような輩は少なくなった。
本当に、変わった。もう俺がいなくても十分安心出来るほどに、俺なしでもやっていけるほどに成長している。全てのことを、高い水準でこなせる。完璧超人、とまでは行かないがゼネラリストとして、速水奏は成長してきた。
ドラマ、バラエティ、グラビア、ライブ…その他、何でもござれ。速水奏は、アイドルとして、高みへと順調に歩みを進めている。それに比べ俺はトどうだ。年齢以外は変わっていない、会話の主導権も握ることも出来ないし、一つのある考えも、何も変わっていない。変えられていない。
俺は、彼女にとって本当に必要な存在なのだろうか。
奏のプロデューサーとして、ふさわしいのだろうか。
「…暗い顔してるわよ、どうしたの?」
「っ…。すまん、考え事をしていた」
「…ふぅん、そう」
奏に声にかけられ、暗い考えをシャットアウトする。嘘を吐いて誤魔化したことはあっさりとバレたようで、そこからまた俺たちの間に会話はなくなった。
そのとき、ようやく赤信号に捕まった。後ろへ身体を反らせるようにして固まった背中を伸ばす。
静寂の中の、関節が鳴る音と、エンジン音はうるさすぎた様に感じる。
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