11: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/11/01(水) 00:23:57.14 ID:au7VzF580
俺はどうにも、彼女に口で勝つことが出来ない。何歳も年が離れた彼女にもてあそばれることもしばしば。情けない話だ。
しかも、奏はこの3年でさらに口が立つようになった。会話において、俺がマウントを取れたようなことは本当に少ない。…しかしまあ、だからといって、特段困るようなこともないのだが。
車内は静寂に包まれていて、エンジンの音と、雪がガラスにぶつかる音しかしなかった。寒空の中にまたされて、やはり彼女は少し機嫌が悪いようだ。申し訳ない気分になりながらも、この静寂をどうにも好きになれないので、話題をぶつけることにした。
「なあ」
俺は、流れる景色をぼんやりと見ている奏に言葉を投げかける。彼女は俺の言葉に反応したようで、視界の端で俺の方に向かったのが見える。
「なに?」
「…いや、雪だろ」
「…それがどうしたの?」
「…いつかした、雪の話を覚えているか?」
フロントガラスの上で溶けて水になっていく雪を見て思い出していたことを、俺は奏に問う。が、彼女は少しの間黙って思考し、「いいえ」とだけ返した。
信号はずっと青色で、タイヤが止まる瞬間も、彼女に目をやる暇も無かった。その間に、俺は奏との思い出話を、彼女にした。3年前の夏の日、雪の結晶の形について教えてもらったこと、俺がそれに一期一会のようだと返答したこと、途中途中をかいつまんで話していく内に奏も思い出したようで、それがアイスのカップがきっかけで始まったことなんかを感慨深く話していた。
「そっか…あれからもう、三年も経つのね…」
「…そうだな、三年だ」
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