3: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:06:58.43 ID:s1IKgLXf0
「ああ、亜利沙。随分遅いから心配したじゃないか。……大丈夫か?」
案の定、心配されてしまう。大丈夫と答えるくらいの元気は残っていた。
大丈夫そうだと思ってもらえるかは、わからないけど。
プロデューサーさんはオーディションの結果の話をしなかった。それはきっと、ありさへ向けたありふれた優しさなんだと思う。
「それじゃあ、少しだけこれからの話をしよう。亜利沙には、来月の頭にソロで公演をやってもらおうと思ってる」
「ソロ……ですか!? む、ムリです! ムリですよぉ……! 今日だって、オーディションに落ちちゃいましたし…………」
「だからこそ、劇場の公演で自信をつけて欲しいんだ。大丈夫、公演を観に来てくれるお客さんはみんな亜利沙の味方だよ」
信じられない、そんなのできっこない。ありさの頭をそんな言葉が埋め尽くしていく。
ソロ、だなんて。ありさ一人に、来てくれた人たちを楽しませる魅力なんてあるのだろうか。
ああ、でも。こうやってオーディションに参加して、アイドルちゃんに怯えてしまうことの恐ろしさと比べれば、ずっと頑張れそうカモ?
……ううん、そんなことない。
公演が不安なのも勿論あるけど、こんな考え方をしてしまうありさ自身がいけないんだってことをわかってるから、それがどうしようもなく心細くさせる。
「……ありさ、ちゃんとアイドルちゃんできるでしょうか? みんなを元気にできるような、そんなアイドルちゃんに……」
「勿論さ。亜利沙は39プロジェクトのみんなにも、そして他のアイドルたちにも全然負けてないくらい魅力的だ。俺が保証する!」
プロデューサーさんがそうまで言い切るのだから、尻込みしていちゃいけない、とは思う。
自信が持てなかったとしても、何もせずにいるよりはずっといいはずなのだ。
「う、うぅ……わかりました。ありさは、覚悟を決めますっ……!」
「よし、その意気だ。明日からも頑張っていこう!」
「はい! 明日から…………明日? あ、あああああぁぁぁ!!」
そう、明日。一瞬前まで考えていたことも吹っ飛んでしまった。なんでこんなに大切なことを忘れていたんだろう。
明らかにアイドルちゃんらしからぬ悲鳴をあげてしまった気がするけど、そんなこと、目の前にある大問題と比べれば些細なことだ。
面食らった様子のプロデューサーさんにぐっと詰め寄る。
「明日、ずっと楽しみにしてたアイドルちゃんのライブがあるんです! あの、充電と勉強のため、とかで……行ってきても、いいですか?」
プロデューサーさんは目を丸くして……しばらくしたら、笑いながら頷いてくれた。
24Res/46.67 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20