2: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/10/29(日) 23:05:32.64 ID:s1IKgLXf0
「合格者は二番、四番の方です。呼ばれなかった方は不合格となりますので、お帰りいただいて結構です」
吐き出した息がうまく吸い込めなくて、えづいてしまいそうになるのを必死で抑える。
胸につけた五番の番号札にほんの一瞬だけ視線を向けて、俯き加減で席を立った。
「っぅ、ぁ……っ! はっ、はぁ、あ、うぅ……」
ガタガタと身体を震わせて、不規則に息と嗚咽を漏らして、きっと真っ青な顔をして。
プロデューサーさんに謝るよりも先に、ありさは目についたトイレの個室に逃げ込んでいた。
初めて挑んだ劇場の外でのオーディション、惨敗したことは二の次だった。結果が出るよりも前から、ありさはとうに折れていたのだ。
怖かった。
オーディション会場が、その空気感が怖かった。審査員さんの視線と𠮟咤が怖かった。
そして何よりも、周りのアイドルちゃんの絶対に勝つっていうギラギラした闘志が、怖かった。
大好きなはずのアイドルちゃんを怖いと思ってしまうことが、いちばんいちばん怖かった……!
思い出したくないと思えば思うほど、息苦しさがまぶたの裏側を掠めていくようで、両腕で体を抱きながら背中を丸めてうずくまっていた。
長く、息を吐き出す。まだ気分は重たいけれど、そろそろプロデューサーさんのところへ戻らなきゃ。
オーディションが終わってから、時計の長針は120度ほど回っていた。
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