32: ◆IULkuZ.Noal.[saga]
2017/10/29(日) 21:21:33.28 ID:hGr+6DsHO
いや待て、確かあの時……
『憎悪は魔力に似ている』
そうだ、確かにそう言っていた。いや、ただの憎悪じゃない。
俺が持つのは『鬼姫への憎悪』だ。 それは俺の核、力の根源。
殺したい、痛みを与えたい、消えない傷を与え、絶対の死、あの女を、滅ぼしたい。
だが、魔力だけでは届かない。もっと別の、俺そのものの力をぶつける方法。
俺、そのもの?
……そうか、これなら殺せる。
これは俺にしか出来ず、俺だけが持つ、鬼姫しか殺せない魔法だ。
他の奴等に効くかどうかは分からないが、鬼姫に対してだけは絶大な威力を発揮する。
よし、狼も無事に帰って来た。策も練った。もう、待つ必要はない。俺には時間もない。
さあ、行こう。
ぼろ切れを羽織った死体が、狼の背に跨がって山を下りる。滑稽だな。
そういやこの前、魔族に協力頼まれたっけな。断ったけど。
俺を屍の王なんて言いやがって、俺は人間だってんだよ。
俺は誰かの為に戦うわけじゃない、俺の為に戦う。
誰かを救う為でもない、ただ鬼姫を殺す為に戦う。
だからこそ、鬼姫を殺せる。
55Res/42.57 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20