28: ◆IULkuZ.Noal.[saga]
2017/10/29(日) 21:11:49.89 ID:hGr+6DsHO
すると、背後から彼の声。
側近「俺が来るまで死ぬなよ、鬼姫」
戦いに赴く度に言わせている台詞。
他はぎこちない部下も、これだけはさらりと言えるようになった。
わたしはふわりと浮いて、振り向かぬまま微笑する。
彼の姿を思い浮かべながら緩やかに落下する。
目を閉じて、愛を囁く。
鬼姫「わたしは死なないわ。あなたに会う、その時まで……」
そんな小さな喜びも、屑によって消されてしまった。矮小な、人間に。
彼とは違う、優しげな眼差し。
ただ、その奥には、自分が特別な存在だという自負が見える。
いえ、あれは自負じゃないわね。ただの自惚れ。傲慢。
勇者なんて呼ばれて、その名に酔っているのかしら。哀れだけれど、本人に自覚はないのよね。
世界を救うなんて言って、人々の為に奔走して……本当に馬鹿みたい。
自分の本質も見えていない盲目者、こんなちっぽけな存在が勇者だなんて笑えないわ。
少しは期待していたのに、期待していたわたしが馬鹿みたいじゃない。
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