女戦士「死に場所を探している」ぼく「はあ…」
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18: ◆QKyDtVSKJoDf[saga]
2017/10/29(日) 16:51:13.84 ID:c9/bqZoV0
ぼく「見てもらいたいものというのは、これです」

女戦士「植木鉢に土……それと、木の苗、か? これは」

ぼく「そうです。これはぼくの家系に代々受け継がれてきたもので、名を『邪木の苗』といいます。ぼくの私室で大切に保管していました」

女戦士「『じゃぼく』って、邪悪な木と書くのか? 凄く仰々しい名前だな」

ぼく「ええ、何を隠そう、この木にはかつて世界を支配した『魔王』の力が宿っているというのです」

女戦士「まおう……って、魔王? 私が倒した、あの魔王か?」

ぼく「ええ、女戦士さんが魔王と戦ったというのなら、その魔王なのでしょう。文献によると魔王が存在したのは四百年前とありますから、年代に多少の齟齬はありますが……伝聞が重なる中でその辺りはズレてくるでしょうし」

女戦士「まあ、私の六百年というのもかなりあやふやなものだからな……途中から年を数えるのやめてるし」

ぼく「魔王の力などと伝え聞いても、ぼくは今までそれを鼻で笑ってきました。しかし女戦士さん、あなたの存在でぼくは魔王の力が実際に存在することを確信しました」

ぼく「ぼくはこれから、家に残っている古い文献を読み漁ります。そして、魔王の力を復活させる方法を探ります」

女戦士「魔王の力を? これはまた物騒なことを言い出したな。実際に魔王の力を見た身としては決してお勧めはできないぞ。どうしてそんな決断を下したんだ?」

ぼく「これまで女戦士さんの話を聞いて、また、いくつかの実験に付き合ってもらって、ぼくは確信しました。今、この現代において、女戦士さんを殺す方法はきっと存在しません」

ぼく「女戦士さんは現代の常識では考えられない、奇跡の力でその身を縛られています。考えられるあらゆる方法を用いても、現代ではその奇跡の力を突破することは不可能です」

ぼく「しかし、遠い昔に存在したという、同じ奇跡の力なら? 女戦士さんの体に宿る呪いを打ち消す魔法が、同じ神代には存在していたかもしれない。いや、必ず存在していたはずだ」

女戦士「断言したな。それはまた、どうしてだ?」

ぼく「女戦士さん、あなたに不老不死をもたらしたというその死者の指輪。作った者に心当たりはありますか?」

女戦士「無い。これは昔、どうしても不老不死になりたかった私が世界中を旅してやっとこさ偶々見つけたものなんだ。作った者どころか、当時は所有者すらいなかった」

ぼく「やはり。ならば、間違いないでしょう」

女戦士「一人で納得してないで説明してくれ」

ぼく「わかりませんか? 簡単なことです。女戦士さん、死者の指輪はあなたを呪うために作られたものじゃない。あなたは少なくとも二人目以降の指輪の犠牲者だということだ」

女戦士「あ……」

ぼく「死者の指輪が真に解呪不可能な不老不死の呪いだとしたら、指輪はあなたの手には渡らず、最初の犠牲者……不老不死を生み出すほどの怨念の向く先となった者の指にいつまでもあったはずだ」

ぼく「しかし女戦士さんが発見した時、指輪は独立してそこにあった。それはつまり、最初の犠牲者が不老不死から逃れたことを意味している。その方法が、無事に解呪できたのか、あるいは死によるものなのかまではわからないけれど」

女戦士「…………」

ぼく(女戦士さんは感極まったのか、無言で肩を震わせていた)

ぼく(六百年の旅路……もしかすると彼女がこうして希望を抱いたのは数百年ぶりのことなのかもしれない)




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