5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/10/29(日) 00:48:19.50 ID:xEnS6ULnO
しゅん、と。浮かべた表情が薄く曇る。
そんな顔をさせてしまったことに慌ててしまって、申し訳のない想いに溢れてしまって。そうして一瞬体勢を崩してしまいそうになったのを、けれど抑えられて保たされて。深く密着したのはそのまま、彼女に言葉を続けられる。
「その、聞いたんです。そうすれば叶うのだと」
「叶う?」
「はい。……眠りの中の想い人へ囁きを注げば、それは心へ根付き、叶うのだと。そのように」
「囁き……」
「ええ。……マスター」
「?」
「私は綺麗ではありませんか?」
「えっ?」
「可愛くは見えませんか? 美しくは映りませんか? 私のことを、普段より愛おしくは感じませんか……?」
上目遣いで窺うように。どこか不安そうに。どこか期待を込めた瞳で。見つめながら言ってくる。
優しくそっと。僕へ触れる力のそれは変わらず。けれどかすかに動きをぎこちなく硬くしながら。言って、返事を待って見つめてくる。
「……綺麗だよ」
それに僕はそう答えた。
表情。言葉。仕草。感じられるジャンヌのすべてを受けて、そうして抱いた本心からの言葉。嘘偽りのない本当の気持ち。
「綺麗だ。誰よりも可愛く見える。何よりも美しく感じられる。恋しくて、愛おしい」
「……」
「……」
「……それは本当の言葉なのでしょうか」
「え?」
「私に促されて……無理に言わされてしまった言葉ではないのでしょうか……?」
「そんなことない! それはその……すぐにそう答えてあげられなかった僕が悪いんだけど……これは、本当に嘘じゃない心からの言葉だよ」
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