鷺沢文香「とある国語辞典にまつわる思い出」
1- 20
3: ◆ROiGFUMIKA[saga]
2017/10/27(金) 00:12:19.26 ID:iRLQJglJ0



アイドルとなることを決意して、事務所と契約を交わしたまでは順調でした。

その後の宣材写真の撮影や、採寸なども順調とは言えないまでも、初めてながらになかなかに健闘したのではないかと自賛します。

けれど、その次に待ち受けていたプロフィールの作成で躓きました。

名前、年齢、身長、体重、と順番に埋めていったところ、最後の項目である趣味の欄で悩み込んでしまいました。

考えれば考えるほど、思考は袋小路に迷い込むようで答えが出せぬまま、うじうじとペンを回すばかり。

あまり長く考えてプロデューサーさんをお待たせするのも忍びないと思い半ば投げやりに、“読書”と記入しました。

そうして書き終えたプロフィールシートをプロデューサーさんのデスクに提出しに行きましたところ、やはり趣味の欄を見て「うーん」と言われてしまいました。

「鷺沢さんの趣味が読書っていうのはわかるんですけど、こう……なんて言ったらいいかな」

「華がない……のですよね」

「もちろん、素敵な趣味だとは思います。ただ、ありきたり……というか」

「あの……すみません。一日だけ、持ち帰らせていただいてもよいでしょうか?」

「急ぐものでもないし、大丈夫ですよ。困ったことがあったら連絡してくださいね」

このように、プロデューサーさんは私の申し出を快諾してくださり、持ち帰って一晩考えてから提出ということになりました。

「プロフィールなんてすぐに書けるでしょう」などと叱責されるかもしれない、と身構えていただけにとても安心しました。

急かすことなく私に歩調を合わせてもらえるのだということがわかり、ありがたいことだなぁ、と思ったのです。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
22Res/14.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice