鷺沢文香「とある国語辞典にまつわる思い出」
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13: ◆ROiGFUMIKA[saga]
2017/10/27(金) 00:17:46.43 ID:iRLQJglJ0



取り留めのない談笑を交えながら、タルトケーキを食べ終えますと、またしても議題は例の物へと戻ります。

そう、私のプロフィールシートです。

「んー。鷺沢さんの趣味が読書なのは、わかるんですよ?」

「ええ、はい。そう、ですね」

「その重そうなトートバッグの中身も本ですよね」

「はい」と返事をしてトートバッグから本を二冊と国語辞典を取り出します。

「わ。思ったより入ってた……ってそれ辞書?」

「ええ、その、恥ずかしながら。趣味というものがどういうものであるかわからなくなってしまい……」

「辞書を引いたんですね?」

「……はい」

「見せてもらってもいいですか?」

「どうぞ……あまり面白いものではありませんが」

辞典を手渡したあとで、栞を挟んだままであることに気が付きました。

受け取ったプロデューサーさんも気付いたようで、それに従って辞典を開きました。

おそらく趣味の語釈が記されている頁です。

「……職業や専門としてではなく、個人が楽しみで愛好していること」

「趣味の語釈、ですよね」

「栞が挟んであったので……。っていうか、素敵な栞ですね。本物の押し花かな」

「そうですか? ありがとうございます」

「……あれ? もしかして手作り……?」

「はい。その、一応は」

「いや、これですよ!」

とてつもない剣幕で、身を乗り出してプロデューサーさんは言いました。

「趣味、栞作りでいいじゃないですか」



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