13:名無しNIPPER[saga]
2017/10/15(日) 16:27:39.31 ID:bD1QFtux0
一撃で席を立ちかけたあたしの肩をPさんの手が制した。それは抱き寄せる態に似て、あたしはウッカリ従ってしまう。
悔しさ半分恥じらい半分にしぶしぶ腰を落とし、それでも精一杯のジト目で睨みつける。弁明くらいは聞いてやろう。
そんな慈悲心を知ってか知らずか、彼は目も合わさずに言った。
「恥ずかしいから、あと少し酔ってから言わせてくれ」
あんぐりと口が開いた。アイドルとしてあるまじき醜態。
しかし大の大人から余りにみっともない理由を言われ、武士の情けというか。
少なくとももーこいつほったらかして帰ろという気分は悔しいことになくなってしまった。こういうのがずるいんだよね。
二人が無言のところに、顔だけはニコニコしたマスターがこれまただんまりでショットグラスをことりと置き、なみなみにウィスキー(テレビでしょっちゅうCMしてるやつ)? を注いだ。
その隣にチェイサ―が供された。
これで更なる時間稼ぎにポテトでも頼もうもんならいよいよ蹴りの一つもいれたけど、次の瞬間、その琥珀色の液体はまるでうがい薬のごとく全て流し込まれ、喉も鳴らさず飲みほされた。
呆気にとられたあたしは、空になったショットグラスが置かれる乾いた音にはっとなる。
次いで、目を閉じたまま棒の様に背筋を伸ばしたPさんに気付いて、チェイサ―をその手の持たせようとする。
「だ、大丈夫なん? それ、強いんでしょ? ほら、お水、おみず――」
彼の人は、閉じていた目を、ゆっくりと開く。
「どうとでもなったと思うよ」
あたしの手がカウンターにゆっくり落ちる。水は辛うじて零さなかった。
思わず何がと訊きそうになった。
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