12:名無しNIPPER[saga]
2017/10/10(火) 01:40:31.24 ID:h3AcEulr0
『……このボタンに誓うよ。杏、いつか必ず、先生のとこまで行くから。……もう会えなくなるだなんて、言わせないから』
高く掲げたボタンを胸の前まで下ろして、拳の中で固く握りしめる。
先ほど口にした言葉が、彼女の心には引っかかっていたらしい。半ば脅すためであったが、彼女には現実味を持って感じられたということか。
事実、それはあり得るのだ。彼女が諦めて、あるいは忘却して、その感情に区切りをつけたなら。きっともう、二度と会うことはないだろう。
だからこそ、彼女の誓いが、彼には胸に響いて聞こえた。
『だから――その時まで、ちゃーんと一人で待っててよ! すぐに迎えに行くからさ!』
それだけを叫ぶようにして、杏は彼に背を向けて走り出した。
後ろ姿に思わず手を伸ばそうとして、やっぱりよそうとただ見送る。
いつか、彼女が会いに来る時まで――手を伸ばすのはその時にしようと、彼も密かに決めたからだった。
☆
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