68: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2018/05/11(金) 04:22:57.14 ID:dqOtcDic0
「そうだ。私もいっぱいほめてもらおうかな」
「……!」
横目でそこまでの流れを伺っていた誉望だったが。
心理定規がそう言って、誉望の方をじっと見たので慌てて目をそらした。
「でもまだ私はよしよし出来てないわね。パパはとっても偉かったのに」
「おねえちゃんは、ぱぱによしよしして……よしよししてほしーの?」
「ダメ?」
「う〜〜ん……いいよ!」
ご褒美として条件付きとは言っても、あんなに嫌だと言っていた頭なでなでをゆるしてしまったかきねはすっかり抵抗感が薄れたのか。
あっさりオーケーがでた。
心理定規は得意の心理術をフル活用して、いつもよりちょっとチョロくなっているリーダーに付け込んでいる。
誉望は声も出せないまま震え上がった。
いくらちょっと小さくなってしまったからと言って、垣根相手にそこまで出来るのは彼女くらいのものだろう。
流石は『スクール』さえも陰で操る実力者、と噂され下っ端に恐れられている少女。
その力が今、可愛いものを存分に愛でるために使われている。
「おねえちゃんはあまえんぼさんだなーもー」
「いいでしょー? 誉望君にはいっぱいしてたじゃない」
「おそろがいいのか。はーい、じゃあもっかいおれのばん。よしよしするぞ」
交代してね、と言って心理定規はかきねを自分の膝に乗せた。
すぐ横で小さいパパとおねえちゃん……小さいリーダーと同僚がイチャつきはじめている。
しかもリーダーが完全に手玉に取られている形で。
状況のいたたまれなさに誉望は耐えかねて固く目を閉じたが、さっき腕ごとぐるぐる巻きにされたので耳は塞げなかった。
だが、そこは大能力者。
こんな危機的状況でも彼は冷静に対処して、念動力で自分の周囲の音をデリートした。
そうすると、あとは暗くて暖かい毛布の居心地の良さだけが残った。
それまでミイラのようにじっと安置されていた誉望がばっと目を開けた。
「…………っは?! やっべ、すっかり寝て……」
寝たふりだったのがいつの間にか本当に眠り込んでしまっていた。
慌てて静かな部屋の中を見回すと。
かきねと心理定規は仲良くソファに並んだままこちらも眠っていた。
かきねはシャツがめくれて少しお腹が出てしまっている。
心理定規はかきねの方にもたれてすやすや寝息を立てていた。
もぞもぞ立ち上がった誉望は、そんな光景に黙って携帯を向ける。
その後で自分をぐるぐる巻きにしていた毛布を二人にかけてやった。
「……はぁ」
日頃から、組織の為に働く誉望にはつきものの仕方なさそうなため息だったが。
一つ小さな雑用を片付けたその表情はいつもより少し満足そうだった。
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