かきね「すくーる?」
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46: ◆q7l9AKAoH.[ saga]
2017/12/31(日) 23:33:34.87 ID:RLcoTAaT0
「じゃんっ! おにゅーです!」

セーターから変身を済ませたかきねが謎のかっこいいポーズをとる。
おねえちゃんがお手伝い、と言うか着せたので仕上げはばっちりだ。

「おー、垣根さん新しい装備っスね」

「へへへー。いいだろー」

無事にリーダーの新しい服が届いて着替えも済んだ。
だが、心理定規はなんだか不満げだった。
かきねが着ているのは別にクソダサプリントでもカーチャンズセレクションでもなさそうな、よくありそうなものだったが、どうやら無難過ぎて気に入らないらしい。

「後で他のも買いましょう。もうちょっと可愛いのなかったのかな」

その辺の学生に子供服を選ばせて女子基準もクリアする衣装となると相当のファッションセンスが要求されそうだ。
これは、普段からパシられていてもこなせる任務ではない。
誉望が行かなくて大正解だった
食事に着替え、と済んでいよいよリーダーは外に出かけられるようになった。
この後、信頼できる筋の医者にかきねを診せることになっているらしい。
一応、このとびっきりおかしな異常の他にも健康上の問題がないか色々と検査をする必要があると判断したらしい。
同時に隠れ家も移動すると言う。
第三学区……このマンションの近辺では小さい子どもは目立つ。
加えて、『外』向きの施設が充実している都合上、警備もよそより厳重だ。
何か起きた時に、厄介な警備員がすぐとんできてしまっては困るのでもっとごみごみした治安の良すぎないところに拠点を移す、と言う話だった。
こーそーまんしょんとお別れすると聞いてかきねは残念そうだったが、お引越しとおでかけの話には大喜びだった。

「いい? 知らない人にこっちにおいでって言われてもついていっちゃだめよ」

「いかない……なんで?」

「垣根さんを誘拐するわるーい奴かもしれないからっス。知らないおじさんに『ここに指をペタッとしてくれたら、何でも好きなもの用意してあげる』とか、垣根さんに何かして欲しいって言われても 、お願い聞いちゃいけないっスよ。すぐ俺かおねえちゃんに教えて下さい」

お兄ちゃんおねえちゃん、保護者のみなさんに出かける前の大事なはなしをされてかきねも一生懸命聞いていた。

「おもちゃもだめか」

「だめよ」

「んー。おかしもだめ?」

「ダメっスね。そう言うのは、みんなで買いに行きましょう。まあ何かあっても、心理定規おねえちゃんが守ってくれるから平気っスけど」

「そっか……うーん。わかったがんばるな」

外には怖いことや誘惑がいっぱいだと聞いて小さいリーダーも頑張ってくれるらしい。
らしいのだが、どうにも不安な二人だった。

「あの垣根さんがお菓子やおもちゃで釣れそうだとは……」

「子どもって純粋ね」

二人とも、特別他人の世話を焼くタイプでも面倒見がいいわけでもないのだが。
振り回す側の人間がいるとついそう言う役回りになってしまいがちだ。
みんながみんなボケ倒していたらツッコミ役が必要なようにそれは組織と言う輪の中でも円滑なコミュニケートと話題の移行には欠かせないものでもあるのだが……。

「んーとね? おそとにはぷれぜんとくれるひとがいるの?」

「……普通はそんな人いないんで、近くにいっちゃだめですよ」

今までで一番、振り回してくれそうな展開を予感して。
誉望は早くもあきらめムードで力なく微笑んだ。

「意外といるんだけど、なにかくれるってことはお返しがいるから。気をつけなきゃダメよ?」
「そこはおねえちゃんさん基準だとまずくねっスか」

心理定規も珍しくふざけてくる。
普段しっかりしていそうなのに、予想外のタイミングでユーモアのセンスを発揮してくることがあるので油断できない。
案外本気なのかもしれないのが、また厄介だ。
『スクール』の戦いははじまったばかりなのに今からこの調子でなんとかなるのか。
否、なんとかしなくてはいけない。
たとえリーダーが頼りにならず、あてに出来ない状況でも組織一丸となって、この苦難に立ち向かわなくてはいけない。
と、言うのに。

「おひっこしとおかいものもいくの?」

「そうよ。みんなで出かけるの。ご飯のお買い物もしないとね」

「ごはんか。えっとねーなにがいいかなー? えびふらいかなー?」

「もう。お昼に食べてたじゃない」

「なんだ、この……ふわふわ時間」

暗部組織の隠れ家は、諸事情によりほのぼの空間になりつつあった。


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