26: ◆q7l9AKAoH.[saga]
2017/10/31(火) 04:03:17.38 ID:x6mL7DL40
「何してるの? お絵かき?」
「ちがう。おれいまいそがしーの」
心理定規がやっと帰ってくると、かきねと誉望は二人でなにやら一生懸命紙に書いているところだった。
「垣根さんの暗号名を決める会議の真っ最中っス」
組織のリーダーである垣根をなんて呼ぶか。
二人は斬新で、一般人にはばれないような呼び方のアイディアを出しあっていた。
「ひみつのそしきだからこーどねーむがなきゃな。よぼーはごーぐる。おれは、りーだーにしたらっていってたけどな。やなんだ」
「あら。どうして?」
心理定規が不思議そうにすると。
かきねはよくきいてくれた! と言いたげにドヤ顔で笑った。
「こーどねーむはほかのひとにないしょにするからな。なんだかわかんないのがこーどねーむなの」
「垣根さん、何かいいのありました?」
「えびまよ、でんち、ぷれみあむ。あと、びすこもいいなー」
基準がよくわからない単語を読み上げるかきね。
心理定規は誉望の前の紙を覗きこんだ。
「どれ? こっちのはカイザー、ツヴァイ、ブラックサンダー……ずいぶん難しいのね。でもリーダーで十分じゃないかしら」
それはなんだかよくわかんない名前、のテーマに真っ向から対立する初期案だ。
秘密会議の議長がそれを聞き逃すはずがなかった。
「なんで?」
「小さい子が大人のリーダーなんて誰も思わないから。他の人は何のことだか気づかないし、もし本当のことを知ったらすごくびっくりするんじゃない?」
「そっか」
「絶対わからないわ。それにとっても素敵」
「そっか! かっこいーか?」
「そうね。誉望君、あまり変なあだ名になると間違えないように呼ぶのが大変よ?」
「そうですね。いやー気づかなかったっス」
心理定規の子どもだということを逆手に取った逆転の発想、と見せかけて何も変えずに納得させてしまった。
「少しは仲良くなれたみたいね。でも、君は今の状況を受け入れ過ぎだと思うわ」
子ども相手にそこまで合わせる必要はない、と心理定規は釘を刺す。
確かに、誉望は面倒を見ているというよりは一緒になってふざけているばっかりだ。
それもあまり度が過ぎるのはよくない傾向だろう。
「いやー、いつどこでメクちゃんが地上に来てもいいようにイメトレしてるんでこれくらいは……」
「それはなあに?」
「これらいおん。こっちしまうま」
「じゃあこれは……ねこさんかな?」
「ざーんねん。れっさーぱんだでした」
心理定規はコードネームの候補の横にかいていたお絵かきをみていた。
「私にも貸して。じゃあ……はい。なんでしょう?」
「えっとねー、おみみがあって、ながーい……うさぎ?」
「あたり」
「じゃあじゃあこれはなーんでしょー」
「難しいわね」
誉望を途中からシカトして、二人は楽しそうにおしゃべりしている。
『スクール』のよくある光景だ。
なんだかそうしていると見慣れたいつもの様子と変わらないようで、誉望はどっと疲れた肩を落とした。
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