152: ◆hfr5rHILM6
2017/10/01(日) 16:58:25.04 ID:YcYnwTxy0
「で、原因が判明した訳だが」
「……うん」
「そうですね……」
「ぐす……ふぇ……」
元々雀の涙程度しかなかった緊張感は、あまりにくだらなすぎる理由の判明により完全に消滅していた。
もっとなんかこう、組織の陰謀とか雪ノ下さんの策略とか、そういうことを心の中ではちょっとは期待してたよ? そんなものは全く持って存在しなかったわけだが。
まぁ、強いて言うならこの人を小さくしてしまう理論については謎のままだが……ここについては触れないでおこう、うん。
ロリノ下さんは先ほどから俺の袖を掴んだまますすり泣いている。
精神が肉体に引っ張られるというのは、先の雪ノ下の弁だが、どうやら姉のあまりの傍若無人さに、ここまで幼女勢で唯一大人っぽさを保っていたロリノ下さんまでもが、なんかいろいろバランスを崩されたらしい。
ずっと気を張っていた上に、先のネタばらしがあり、更に明日の魔王襲来を予告されているわけだから、その心中は察するに余りある。
「……まぁなんだ、元気出せよ」
右手でそっとロリノ下の頭を撫でてやる。小さくなってもそのサラサラの黒髪の感触は指に心地よい。
昔小町をあやしつけていた時を思い出しながら頭を撫でていると、ロリノ下は頬を染めて、涙の滲む目でこちらを見上げて、ぼそりと。
「……おにいちゃん……」
そう呟いた。と同時に俺も思いっきりハートを射抜かれた。
雪ノ下さんが天使と称するだけはあって、確かにロリノ下の愛らしさは天元突破する勢いであった。
小町という最愛の妹が居なければ大きいお友達の仲間入りをしていたかもしれない。
しかしその動揺は周囲にも伝わってしまっていたようで、ロリヶ浜さんとロリはすが頬を膨らませながら胸にかきついてきた。
「ひっきぃ、ゆきのんにだけちょっとてつきやさしくない!? あたしにもおなじくらいやさしくあたまなでて!」
「なんですかそのはーとをいぬかれちゃいましたみたいなひょうじょうは! わたしだってなんかいもよんであげますよ、おにいちゃんおにいちゃんおにいちゃん!」
その騒ぎようで正気を取り戻したのか、ハッとした表情になった雪ノ下は素早く俺の手から離れて目元をごしごしと拭き、早口でまくしたて始めた。
「いやさっきのはちがうのよそこのおとこがおにいちゃんにみえたわけがないじゃないそうよいちじきのきのまよいだわふかくふかくふかく……」
元の姿ならともかくロリがそんな言い訳をしても可愛いだけである。
俺は思わず悪戯心を発揮して、ニヤリと笑いながらロリノ下さんに言った。
「ん〜? お兄ちゃんに甘えてもいいんだぞ、雪乃ちゃん?」
「〜〜〜〜〜ッ!! もうしらないっ!!」
ロリノ下さんはあっという間に頬を紅潮させると、ダッシュで廊下の方に走って行ってしまった。しまった、ちょっとからかいすぎたか。
「歯はちゃんとみがいとくんだぞー」
雪ノ下さんがあれだけ雪ノ下をからかう理由がちょっとわかってしまったかもしれない。俺はあの人をちょっと理解してしまったことを若干後悔するのだった。
「ずるいー! ゆきのんばっかりなまえでよぶなんて! あたしのこともなまえでよんでよー!!」
「おにいちゃん、ちょっとゆきのしたせんぱいびいきがすぎませんか!? わたしもいろはっていうなまえがあるんですよ! い・ろ・は!!」
ついでになんか火種を投下してしまったことも後悔するのだった。
というかお前らはもう少し大人の体裁を保てよ。
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