ミリオンデイズ
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125: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/23(木) 00:53:42.28 ID:iIqpRiWl0
===17.

いつからかな? 他人(ひと)に髪の毛を弄られる感触が、こんなに心地よくなったのは。

「ねぇハニー」

「なんだいダーリン?」

「そのダーリンって言うの止めようよ」

「ならミキも、ハニーって呼ぶのを止めないとな」

部屋に広がる独特の香り。足元でカサカサ鳴ってる新聞紙。
両目は軽く閉じたままで、作業中の彼に声をかける。

「どうして? ……ハニーって呼ばれるの、嫌い?」

「う〜ん……。好き嫌いの話じゃなくてさぁ、似合わないだろ? 俺に」

「そんなことないの」

「そんなことあるの……よし、大体全部終わったかな」

その一言を合図にして彼の手がスッと離れていく。
それは同時に、気持ちいい時間が終わりを告げた瞬間なの。

でも、しょうがないことなんだよね。楽しい時間や幸せな時は、
「永遠に続け〜!」って思えば思うほど、あっという間に過ぎちゃうから。

瞼をそっと開けてみて、首だけを回して彼の方を見れば――。

「何……してるんです美希先輩?」

「髪染めてんのか? 劇場(こんなトコ)で」

丁度部屋へと入って来た、翼とジュリアの二人と目が合った。

「そうだよ。最近色落ちしてたから」

「でも先輩、フツーは美容院とかで――」

「地毛じゃ無いのは知ってたケド、まさかプロデューサーがやってたとは驚きだな」

呆気にとられる二人に向けて、ハニーが「誤解するなよ」と肩をすくめる。

「俺なんかただの素人さ。美希のワガママに付き合わされてるだけなんだよ」

途端、翼は期待が外れたような顔になると「なーんだ、そっかぁ〜」なんて残念そうな声を上げた。
すると彼女の頭に手を置いて、ジュリアが呆れたように言ったんだ。

「おい翼、なんでガッカリしてんだよ」

「だってジュリアーノ。プロデューサーさんが髪を染めるの上手なら、わたしたちもお願いしようかな〜……なーんて」

その時だよ。誤魔化しながらも呟いた翼の目が一瞬本気だったから――。

「ダメなの」

……ちょっとだけ、強く言い過ぎちゃったかもしれないけど。今でさえデートの邪魔もされてるし、
付き添いの時間も減ってるし、これ以上ハニーと二人で居れる時を誰かに渡したくなんてなかったから。

「プロデューサーはホントに下手だから、翼たちの髪の毛を上手に染められるワケないの」

「おい、おい!」

「染め忘れとか色ムラとか失敗するのが当たり前。だから翼たち二人には、
素直にちゃんとした美容院に行って欲しいってミキ思うな」

「おいこら美希、ちょっと待てって」

「待たない! プロデューサーは少し黙っててっ!」

ビシッと鋭く言い放つと、彼は渋々といった様子で口を閉じた……ごめんねハニー、後でタップリサービスしてあげるから。
ミキ的にはハニーの話に耳を傾けるより、今は目の前のお邪魔虫をどうにかするのが先なんだよ。

だから律子、さんの真似をするように腕を組み、翼たち二人に言ったげたの。

「これもひとえに先輩としてのロバ刺し? ……ってヤツから来てる忠告ね、うん!」

「ロ、ロバ?」

「うぅ、美希先輩の言ってることよくわかんない……」

「とにかくプロデューサーに髪を染めて貰えるのは、事務所の中でもミキだけなのー!!」


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