117: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/17(金) 00:36:55.40 ID:j29cbswo0
===15.
事務所の談話用空間にて、新聞を広げてガサガサガサ……。
やよいさんと志保さんはその手に持った紙の束に、一枚一枚目を通します。
何を隠そう、それは宝くじの束。
彼女たち二人のすぐ傍では、購入者でもある仕掛け人さまも当選番号と睨めっこ。
「はずれ、はずれ、これもはずれ」
「これもこれもこれもはずれですー」
「うーむ、結構買ったのに今回はまだ一枚も当たってない……」
ぐぬぬと悔しがる彼を見もせずに、志保さんはやれやれとため息をつきました。
「大体不健全なんですよ。こんなコトでお金を増やそうとか」
「なんだよ、夢を買ってるんだ」
「でもプロデューサー? こんなに沢山あったって、紙は食べられないかなーって」
「やよいは現実的だなぁ。……だけどこの紙の中にはごく稀に、お金と交換できる物だってあるんだよ」
そうして、三人は視線すら合わせずにその後も黙々と作業を続け。
「……はい、こっち終わりました」
「私もぜーんぶ終わりましたー!」
「よし、じゃあ今回当たった総額は――合計三千九百円!」
三百円の当たりくじが十三枚。使った時間は一時間。
やよいさんと志保さんが仕掛け人さまに向けて同時に右手を差し出します。
「それじゃあ約束のバイト代を」
「一人一時間八百円、ですよね? プロデューサー」
「現物支給でいいですから――ここから三枚貰いますね」
「それじゃ、私も志保ちゃんと同じで三枚分」
手渡されたくじを確認すると、お二人は素敵な笑顔で「ありがとうございました」と述べて席を立ちました。
一人残された仕掛け人さまが首を捻る。
それから彼は一部始終を見届けていた私の方へ顔を向け。
「いいかエミリー。これが有名な『時そば』だ」
「絶対違うと思います」
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