白望「古参、新顔、ニューフェイス」
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66: ◆Xk..svTef9j1[saga sage]
2017/09/27(水) 20:18:41.82 ID:azWsX3x10
>>56を↓に



 見たままつけた名前、というわけではないのだと思う。

 我らが先鋒さまを意識しての命名なのは、名を呼ぶ豊音の楽しげな顔を見れば明白だった。

豊音「ご飯あげるねー」

 豊音は通学バッグから猫缶を取り出し、ぱかりと開けている。

「! ウニャー!」

 自分の食事だと気づいた猫が、しゃがみこんだ豊音の膝に前足をのせて荒ぶっている。

豊音「まってー、スカートに爪たてないでー。はい、どうぞ」

 慌てて缶を地面に置く豊音。
 ものすごい勢いで猫缶に食いつく白猫。

 そういえば、数日前に少し触ったとき、ずいぶん痩せていると感じたっけ。

 豊音が誘いを断った理由にも、これで察しがついた。

 気ままな野良猫のあの子が、明日もあの植え込みにやって来る保証はない。

 豊音は次にいつ会えるかわからないあの子に、餌をやるチャンスを逃したくなかったのだろう。

豊音「まだここにいてくれてよかったよー。しかしあれだよね、君らはほんと、大急ぎで食べるよねー。もっとゆっくりでいいのにー」

 まるで人間に対するときのように、普通のトーンでしゃべる豊音がおかしい。

胡桃「ふふ」

 堪えきれず笑いながら近づくと、豊音はびくりと体を震わせて、こちらを振り返った。

豊音「胡桃ー」

 どことなくバツの悪そうな表情。
 
胡桃「疲れてたんじゃなかったの?」

 少し意地悪を言ってみる。

豊音「あ、ああー……っと。えっと。えへへぇ……」

 豊音は口ごもり、何かを誤魔化すように頭を掻いて笑った。

 嘘がばれていることは、今の一言で伝わったようだ。

 嘘をついてまで一人で来ることはないのに……とは思うけれど、豊音としては、ひとりで来るほうが気楽だったのだろう。

 数日前、私はこの白猫から猫パンチをくらっている。

 白猫は豊音によく懐くが、私には馴れてくれない。

 あの日、猫を逃がした私は豊音に謝った。

 あの程度のことで謝罪を受けるのが、友達付き合いに慣れていない豊音には気が重かったのかもしれない。

 豊音のことだから、私がまた猫パンチをくらって怪我でもしたら――なんてことも考えていたのだろう。



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