56: ◆Xk..svTef9j1[saga]
2017/09/25(月) 19:40:51.68 ID:AUPcYDZ90
見たままつけた名前、というわけではないのだと思う。
我らが先鋒さまを意識しての命名なのは、名を呼ぶ豊音の楽しげな顔を見れば明白だった。
胡桃「ふふ」
堪えきれず笑いながら近づくと、豊音はびくりと体を震わせて、こちらを振り返った。
豊音「胡桃ー」
どことなくバツの悪そうな表情。
胡桃「疲れてたんじゃなかったの?」
少し意地悪を言ってみる。
豊音「あ、ああー……っと。えっと。えへへぇ……」
豊音は口ごもり、何かを誤魔化すように頭を掻いて笑った。
嘘がばれていることは、今の一言で伝わったようだ。
嘘をついてまで一人で来ることはないのに……とは思うけれど、豊音としては、ひとりで来るほうが気楽だったのだろう。
数日前、私はこの白猫から猫パンチをくらっている。
白猫は豊音によく懐くが、私にはあまり馴れてくれない。
あの日、猫を逃がした私は豊音に謝った。
あの程度のことで謝罪を受けるのが、友達付き合いに慣れていない豊音には気が重かったのかもしれない。
豊音のことだから、私がまた猫パンチをくらって怪我でもしたら――なんてことも考えていたのだろう。
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